研究課題/領域番号 |
19K07309
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 元彦 愛知医科大学, 医学部, 教授 (40292122)
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研究分担者 |
山村 彩 愛知医科大学, 医学部, 講師 (40633219)
林 寿来 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30533715)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血管内皮増殖因子受容体 / 血小板由来成長因子受容体 / 細胞内情報伝達 |
研究実績の概要 |
申請者はG蛋白活性調節因子(Activator of G-protein signaling 8、AGS8)が血管内皮細胞の血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR2)シグナルを制御し、また、リンパ管内皮細胞でもVEGFR3受容体シグナルを制御することを報告した。AGS8が他のチロシンキナーゼ受容体を制御する可能性を、血小板由来成長因子(PDGF)受容体に焦点を当て検討した。 ヒト肺動脈平滑筋細胞のAGS8mRNA発現をsiRNAにより約30%程度まで抑制した。細胞をPDGFBBで刺激し、PDGF受容体のリン酸化を検討した。PDGFRα受容体のリン酸化はAGS8siRNAにより抑制された。PDGFRβ受容体のリン酸化は、初期の研究シリーズでは明らかな抑制がウェスタンブロットにより確認された。しかし、新型コロナウィルスによる中断を経て再開した実験では、ウェスタンブロットのシグナルが十分に安定していない。細胞、抗体のロットによる影響を考え、PDGFRβ受容体のリン酸化については、現在、注意深く検討を進めている。PDGF受容体の下流シグナルについてERK、p38MAPK、AKTのリン酸化を検討したところ、PDGFBB刺激後に生じるAKTのリン酸化が抑制された。一方、ERK、p38MAPKについては明らかな抑制は見られなかった。 PDGFBB刺激により引き起こされる①細胞増殖(MTTアッセイ)、②細胞遊走(transwell法)に対するAGS8siRNAの効果について検討を開始している。さらに、PDGFシグナルに対するAGS8阻害薬Xの効果についても検討を開始した。 また、昨年度より継続してCOS細胞を用いた共発現系でAGS8-Gβγ形成におけるAGS8阻害薬Xの作用を引き続き検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、新型コロナウィルスによる研究中断期間が生じ、また、実験再開後にヒト肺動脈平滑筋細胞の培養が一時期不安定となった。また、培養容器、抗体の納入にも一時期遅延が生じ、これらの影響もあり実験進捗に遅れが生じた。 しかし、令和2年度に予定していた①細胞増殖(MTTアッセイ)、②細胞遊走(transwell法)等の実験は、他のプロジェクトで安定して施行しているものであり、速やかに検討を終了できると考えている。また、AGS8阻害薬Xの効果についても、他の細胞系・受容体系で増殖・遊走等の検討を行っており、これも速やかに検討を終了できると予想している。 他方、AGS8阻害薬X のAGS8-Gβγの結合阻害効果を共発現系を用いて行う実験は諸条件の最適化にさらなる検討を行う。 全体計画の中では、進捗にやや遅れが生じているが、概ね仮説に沿った結果が得られている。AGS8がVEGF受容体のみならずPDGF受容体を制御することが明らかなりつつあり、研究上着実な進展が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
1.ヒト血管平滑筋細胞のAGS8をsiRNA によりノックダウンし、PDGFBB刺激により引き起こされる①細胞増殖(MTTアッセイ)、②細胞遊走(transwell法)への影響の検討を始めているが、これを完了させる。また、PDGFシグナルの抑制がAGS8阻害薬Xでも得られるか検討する。PDGFBB刺激により引き起こされる①細胞増殖(MTTアッセイ)、②細胞遊走(transwell法)へのAGS8阻害薬Xの効果に関する検討を始めているが、これを完了させる。 2.AGS8阻害薬X のAGS8-Gβγの結合阻害効果については、引き続き検討を行う。 3.AGS8ノックダウン後、PDGF受容体の細胞膜局在を蛍光免疫染色とFACSを用いて解析する。 4.ラットのモノクロタリン肺高血圧の進展にはPDGFが関与し、非特異的受容体チロシンキナーゼ阻害薬により軽減される。AGS8阻害薬は、受容体チロシンキナーゼ阻害薬とは作用点が異なる肺高血圧治療薬となる可能性がある。AGS8阻害薬Xをモノクロタリン肺高血圧ラットに投与し、肺高血圧軽減効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に計画されていた助成金は試薬購入の他、研究推進に必要なパートタイム研究補助員の謝金として使用した。研究補助員の新型コロナウィルスによる休業期間により未執行予算が生じた。次年度の消耗品購入、研究補助員謝金として使用する予定である。
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