研究課題/領域番号 |
19K07315
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
菅波 晃子 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (10527922)
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研究分担者 |
田村 裕 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (50263174)
岡本 芳晴 鳥取大学, 農学部, 教授 (50194410)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ICG修飾リポソーム / 近赤外線LED治療装置 / ペプチド医薬 / 制御性T細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は,ICG修飾リポソーム(LP-iDOPE)と近赤外線LED治療装置(NIR-LED)を用いた“光免疫誘導法”を利用した“がんの非侵襲性治療”の創生を目指している. これまでに,LP-iDOPEとNIR-LEDを用いた“光免疫誘導法”を開発し,がんを自然発症した同伴動物を対象にして“獣医師主導型臨床試験”を実施してきた(奏効率:約65%).この結果より,がん微小環境に於ける制御性T細胞(Treg)の免疫抑制機構を阻害する機能を“光免疫誘導法”に付加することができれば,不奏効症例(約35%)に対する治療効果の改善が図れるとの着想に至った. 令和2年度は,まず,令和1年度に於いてコンピュータ・シミュレーションを活用して分子設計に取り組んだ「抗CCR4ペプチド医薬」に関する二次候補ペプチド(10種類にまで絞り込んだ)の中から5種類を三次候補ペプチドとして選抜し,化学合成を行った.次に,化学合成した5種類の三次候補ペプチドに関して,CCR4に対する生体分子間相互作用をBIACORE T-100(GE社製)により測定することにより,各々が有する結合特異性・相互作用速度・結合力等の特性を評価した.さらに,5種類の三次候補ペプチドに関して,各々をLP-iDOPEに包埋することにより5種類の抗Tregリポソーム(#1~5)として構築し,nano Partica SZ-100(HORIBA社製)により粒子径・電荷・形状安定性等の特性を評価した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,令和2年度に於いては,「抗CCR4ペプチド医薬」に関するin vitro機能評価を実施する予定であった. しかしながら,令和1年度に於いて,「抗CCR4ペプチド医薬」の分子設計を行う際,一次候補ペプチド(約100種類)に関する“CCR4の特異的認識・結合能”と“Tregの免疫抑制機能阻害能”を評価する際のドッキング・シミュレーション計算において難航し,二次候補ペプチドを10種類にまで絞り込むまでに予想以上の計算時間が必要であった. そのため,①「抗CCR4ペプチド医薬」の化学合成,②「抗CCR4ペプチド医薬」の物理化学的機能評価,③「抗Tregリポソーム」の構築に関する検討を令和2年度に実施することになった.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度に於いては,令和2年度に構築した「抗Tregリポソーム」に関するin vitro機能評価として,各がん種の培養細胞を用いて「抗Tregリポソーム」が有する「ICG誘導体」の光吸収特性による内包薬剤(抗CCR4ペプチド医薬)の放出を分光学的手法により確認すると共に,壊死誘導に関する機能をMTT Assay等により評価する. さらに,「抗Tregリポソーム」のin vivo機能評価として,担がんマウスを用いて「抗Tregリポソーム」による“新規光免疫誘導法”を実施し,生存期間,体重変化,腫瘍体積変化,FACS解析,実験病理学的解析,次世代シークエンス解析(RNA-seq)等の結果を基に,Tregの免疫抑制機能の調整の至適条件を設定する.さらに,「抗Tregリポソーム」のトランスレーショナルリサーチとして,従来の“光免疫誘導法”で効果が見られない症例(約10症例)に対して,LP-iDOPEとNIR-LEDと「抗CCR4ペプチド医薬」を融合した“新規光免疫誘導法”を実施し,治療効果を検討すると共に,実臨床に向けた課題等を明確にする.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に於いては,「抗Tregリポソーム」に関するin vitro機能評価を実施するに至らなかった.そのため,がん細胞を培養する際に必要となる試薬類の購入を控えたことにより,次年度に使用する必要が生じた.
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