研究課題
アドレノメデュリン(AM)は血管拡張作用をはじめ多彩な生理活性を有する内因性ペプチドであり、これまでに脂肪細胞の分化、糖脂質代謝およびエネルギー代謝を制御していることを明らかとしてきたが、アドレノメデュリン2(AM2)の代謝制御における意義は明らかでない。本研究では、脂肪細胞の分化や代謝制御における、AMとAM2の機能分化と相互作用、メタボリックシンドロームにおける病態生理学的意義を解明し、メタボリックシンドロームにおいてAMとAM2が治療標的となりうるか検討することを目的とした。令和2年度は、AM2の代謝制御機能を検討するため、食餌誘導性肥満モデルにおけるAM2の病態生理学的意義を引き続き検討した。AM2ノックアウトマウスに高脂肪食(脂肪含有量32%)を10週間投与し、肥満を誘導して解析を行った。AM2ノックアウトマウスは、野生型マウスと比較して体重の増加傾向が認められ、インスリン抵抗性を示した。AM2ノックアウトマウスは、特に脂肪肝が悪化し、遺伝子解析により、マクロファージマーカーや線維化関連遺伝子の発現増加が見られた。また、普通食投与の野生型マウスと比較して、高脂肪食投与の野生型マウスで、肝臓におけるAM2の発現増加が認められたことから、AM2の代謝制御への関与が示唆された。さらに詳細に解析することにより、AM2がメタボリックシンドロームの治療の有用な標的となるか明らかになると考える。
2: おおむね順調に進展している
AM2の代謝制御機能を検討するため、食餌誘導性肥満モデルにおけるAM2の病態生理学的意義を検討した。AM2ノックアウトマウスに高脂肪食(脂肪含有量32%)を10週間投与し、肥満を誘導して解析を行った。AM2ノックアウトマウスは野生型と比較して、体重の増加傾向が認められ、特に脂肪肝が悪化していた。肝臓では脂肪滴の蓄積が増加し、遺伝子解析により、マクロファージマーカーや線維化関連遺伝子の発現増加が見られた。また、AM2ノックアウトマウスは野生型と比較して、インスリン抵抗性を示し、血中インスリンが高値であった。以上の結果より、AM2がメタボリックシンドロームの治療の有用な標的となることが示唆された。当初の目的は、おおむね順調に進展している。
令和3年度は、高脂肪食投与マウスの解析を引き続き行う。特に白色脂肪組織および褐色脂肪組織でのAM2の役割を詳細に解析することにより、AMとAM2の脂肪細胞での機能分化について解明する。さらに、AM2ノックアウトマウスの脂肪組織より前駆脂肪細胞を採取し、脂肪細胞への分化誘導実験を行い、AM2の役割を詳細に解明する。
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