研究課題
本研究は転移発症の重要な病態であると考えられる内皮間葉転換 (EndMT) を標的とし、その分子機構を明らかにするとともに、EndMTに対して抑制的に働くことが示唆されているERK5の腫瘍進展・転移における役割を解明することを目的とするものである。培養ヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) においてEndMTを誘導するTGF-β 刺激は、内皮細胞マーカーであるCD31の発現を低下させた。一方ERK5活性化剤であるピタバスタチンを処置した細胞ではTGF-β刺激によるCD31の発現低下を認めなかった。このことから、培養細胞においてERK5活性化が内皮細胞としての性質の保持に寄与している可能性が示された。さらに、血管内皮細胞特異的ERK5ヘテロ欠損マウス(ERK5EKO)を用いてルイス肺がん由来細胞の担がんモデルを作成した。仮説ではERK5ヘテロ欠損によりEndMTが誘導され、腫瘍の増大に促進的に働くと考えていたが、むしろ腫瘍の増大が緩徐になっている傾向を認めた。そこで、ERK5欠損の血管新生への影響を検討するため、遊離皮弁モデルマウスを作成し、皮弁の生着率について比較検討した。その結果、ERK5EKOでは野生型マウスに比べ皮弁の生着率が向上していることが明らかとなった。このことからERK5欠損により血管新生が促進されたことが示唆される。ERK5によって負に制御されているVEGFの発現上昇がその一因である可能性が考えられた。これまでにTCGAデータベース解析から、腫瘍におけるVEGFおよびVEGF受容体の発現増加が予後の増悪に相関することを見出しており、今後は、ERK5-EndMTに加えVEGFの関与についてさらに検討する計画である。
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