研究課題/領域番号 |
19K07324
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
栗原 崇 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (60282745)
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研究分担者 |
高崎 一朗 富山大学, 学術研究部工学系, 准教授 (00397176)
内田 洋平 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (30571856)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | PACAP / PAC1受容体 / 有機小分子PAC1受容体拮抗薬 / 脊髄痒み伝達 / PACAP欠損マウス / PAC1受容体欠損マウス |
研究実績の概要 |
本年度は、PACAP-PAC1受容体シグナルがどのような痒み伝達に関与しているかを明らかにするため、以下の①~③の研究を主に行った。すなわち、① PACAP-PAC1受容体システムはどのような痒み伝達に関与するのか、我々が創製した有機小分子PAC1受容体拮抗薬を用いた検討を行った。同様に、② PACAP欠損マウスを用いた検討を行った。さらに、③ PACAP-PAC1受容体シグナルはヒト痒み疾患発症と関連するか、痒みを伴う皮膚疾患患者の皮膚生検組織におけるPACAPの発現動態、そしてPACAP血中濃度測定の予備的検討を行った。 その結果、① 有機小分子PAC1受容体拮抗薬 (髄腔内投与、あるいは経口投与) は5-HT、クロロキン、あるいはcompound48/80の皮内投与により誘発される痒み行動を抑制すること、さらにはドライスキンモデル (アセトン・ジエチルエーテル/水モデル)、接触皮膚炎モデル (2,4-ジニトロフルオロベンゼンの短期塗布)、乾癬モデル (イミキモドクリーム塗布)、アトピー性皮膚炎モデル (2,4-ジニトロフルオロベンゼンの長期/2週間間隔数回塗布) における掻痒行動においても有意に抑制した。② PACAP欠損マウスにおいては、5-HTおよび2,4-ジニトロフルオロベンゼン投与により誘発される掻痒行動が著明に減弱していた。③ アトピー性皮膚炎患者を含む痒みを持つ患者3名のPACAP血中濃度を測定した結果、正常成人PACAP血中濃度に比較して低下傾向にあった。また、皮膚生検組織におけるPACAP免疫活性の可視化に成功した。 今後はさらなる例数追加を行うとともに、各種PAC1受容体欠損マウスでの検討を開始できるよう準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種マウス掻痒モデルに対する有機小分子PAC1受容体拮抗薬の効果の検討、およびPACAP遺伝子欠損マウスを用いた解析結果から、様々な掻痒にPACAP-PAC1受容体シグナルが重要な役割を担うという強い証拠が得られつつある。また、ヒト掻痒患者血清を用いたPACAP濃度測定、ヒト皮膚組織におけるPACAP免疫染色にも進展が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまで行ってきた各種掻痒モデルにおけるさらなる検討 (投与経路や濃度依存性などを含め、例数追加) を行うとともに、各種PAC1受容体欠損マウスでの検討を開始できるよう準備を進める。 現在までの所、アストロサイト特異的PAC1受容体欠損マウス作出に成功しており、本欠損マウスを使用した検討を、次年度中に行う予定である。また、PAC1flox/floxマウスに、細胞種特異的にCreリコンビナーゼを発現する市販の各種ドライバーマウス (Avil-Cre/Nav1.8-Cre: 感覚神経選択的欠損目的、Tlx-3-Cre: 興奮性介在神経選択的欠損目的、Pax2-Cre: 抑制性介在神経特異的欠損目的) を交配させる、あるいは各種細胞種特異的Creリコンビナーゼを発現するアデノ随伴ウイルスをL3~5腰髄部に微量注入することで、細胞種特異的PAC1受容体欠損マウス作製を継続していく計画である。
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