研究課題/領域番号 |
19K07327
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
牛島 健太郎 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 教授 (70448843)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 時計遺伝子 / 組織得意性 / がん細胞 |
研究実績の概要 |
2019年度では、時計遺伝子 Bmal1の欠損が膵臓がん細胞に薬物耐性または薬物抵抗性を与えるか否か明らかにするために、培養細胞を用いて以下の検討を行った。まず複数のヒト膵臓がん細胞(Panc-1細胞、MIA-PacaII細胞、BxPC-3細胞、AsPC-1細胞)を用いて、それぞれのBmal1のmRNAおよびタンパク質発現量をqPCR法およびウェスタンブロット法により測定した。併せて、それぞれの膵臓がん細胞にゲムシタビンを曝露してWST-1アッセイを行い、薬物に対する感受性を比較した。その結果、Bmal1発現量に依存してゲムシタビンに対する感受性が異なる傾向を認めた。今後はフルオロウラシル等の薬物に対する感受性とBmal1発現量との関連性についても検討を進める。 続いて、ゲノム編集によってBmal1遺伝子をノックダウンさせるために最適なターゲット配列部位を決定するための予備検討を行った。Bmal1遺伝子の転写開始点から806、1044および1984番目の塩基を含む21塩基を標的とする各siRNAを合成し、それぞれの遺伝子発現抑制効果をリポフェクション法により評価した。最も遺伝子発現を抑制したsiRNAは、806番目の塩基を標的とするものであった。このsiRNAを用いて、膵臓がん細胞のBmal1遺伝子ノックダウンによる薬物感受性の変化を評価した。Bmal1発現量が少ないPanc-1細胞およびMIA-PacaII細胞では、Bmal1遺伝子発現を抑制してもゲムシタビンに対する感受性に明らかな変化を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年4月に現在の所属先へ異動し、新規に研究室を立ち上げた。研究室内の実験作業に掛かる全ての器具および消耗品を準備し、作業環境をゼロベースから整備する必要があった。そのため、実験作業の開始時期が2019年夏頃になってしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
RNA干渉法にて標的とするBmal1遺伝子の配列部位は決定している。2020年度ではまず、2019年度中に到達予定であったBmal1欠損のがん細胞(膵臓がんおよび肝臓がん)の作成を継続する。特に、Bmal1発現低下により薬物の感受性が最も鈍化する細胞を選定する必要がある。 その後、2年目に計画しているオープンクロマチン領域の探索を行う。作製した各種Bmal1欠損がん細胞を用いて、Assay for Transposase-Accessible Chromatin-シーケンス法によりオープンクロマチン領域を網羅的に解析する。Bmal1欠損によりクロマチン構造が開放し、転写が活性化しているプロモーター領域に存在する転写調節配列を同定する。さらに、Bmal1欠損によるオープンクロマチン領域の増加が、膵臓がん以外のがん細胞では認められないことを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、勤務先の異動および研究室の新規立ち上げのために研究の初動に遅れが生じた。そのため、当初に計画していた検討内容を全て実施することができず、次年度使用額が生じた。2019年度に実施できなかった検討内容は、2020年度での追加検討項目としており、当初の計画に沿って研究経費を使用する。
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