研究課題
テトラヒドロビオプテリン(BH4)は、芳香族アミノ酸水酸化酵素および一酸化窒素(NO)合成酵素(NOS)の活性に必須のコファクターである。BH4生合成の第3段階を触媒するセピアプテリン還元酵素(SPR)の遺伝子ノックアウト(Spr-/-)マウスはジストニア様の異常姿勢、低体重、高フェニルアラニン血症、不安定な血圧と徐脈を示す。今回さらにこのマウスが高率に重篤な持続勃起症(Priapism)を発症することを見出し、その機序について解析した。Spr-/-マウスpenile homogenate中の総ビオプテリン、BH4、ノルアドレナリン、およびカテコラミン合成の律速酵素であるチロシン水酸化酵素(TH)のたんぱく質量は、野生型マウス(Spr+/+)に比べて有意に低下していた。Priapismを発症したSpr-/-マウスでは神経型NOS (nNOS)が増加し、cGMPが著明に蓄積していた。Spr-/-マウスのPriapismはBH4の反復投与で緩解した。BH4を反復投与したSpr-/-マウスのpenile homogenateではビークルを投与したSpr-/-マウスに比べ、総ビオプテリン、BH4、ノルアドレナリンが増加し、THたんぱく質量は増加傾向を示した。NO代謝物量は減少し、ビークルおよびBH4を投与したSpr+/+マウスと同程度の値であった。これらの結果から、Spr-/-マウスのpriapismは、コファクターとしてのBH4の減少とこれにともなうTHたんぱく質の減少でノルアドレナリン合成が低下し、交感神経の機能が低下したことと、nNOS含有神経系の脱抑制によるNO産生の増加または環状ヌクレオチドの代謝異常によるNO/cGMPシグナル系の亢進による可能性が考えられた。現在BH4減少にともなう交感神経終末および副腎髄質でのTHタンパク質の変化とその機序の解明にむけて、SPR遺伝子を組織特異的かつ誘導的に破壊するマウスを作成中である。
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