研究課題/領域番号 |
19K07333
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
藤井 正徳 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (40434667)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 痒み / アトピー性皮膚炎 / アロプレグナノロン |
研究実績の概要 |
痒みを伴う代表的な疾患であるアトピー性皮膚炎では、アルコール摂取や夜間・睡眠時に痒みが増強することから何らかの中枢神経系の機能調節異常の関与が示唆されるが、そのメカニズムはほとんど明らかになっていない。我々はこれまでに、エタノールやバルビツール酸系薬などの催眠作用のある薬物をアトピー性皮膚炎モデルマウスに全身もしくは脳内投与すると掻痒行動が顕著に増強すること、また、それらの薬物と類似した作用を示す生体内物質アロプレグナノロンが脳内で増加した場合にも同様に掻痒行動が増加することを明らかにした。しかし、脳のどこの部位、また、どのような神経系が関与して掻痒行動が増強するのかは未だ明らかではない。本研究の目的は、アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて、慢性疾患における脳内痒みメカニズムを解明することである。 今年度は、アトピー性皮膚炎マウスにおける中枢性の痒み増悪反応に関与する”脳部位”を特定するため、フェノバルビタール (PhB) もしくはアロプレグナノロン (ALLO) を、中脳水道周囲灰白質、延髄吻側腹外側部や青斑核に微量投与し、掻痒行動の増加が再現されるか検討したが、いずれの部位への投与においても掻痒行動の増加は認められなかった。そこで次に、PhBを異なる投与経路(大槽内、髄腔内または脳室内)および容量で投与し掻痒行動を測定するとともに、青色色素Evan's blueを同様に投与し、それぞれの投与の場合の薬液の分布を確認した。その結果、PhBが脳血管内に存在し、脳内で広範囲に作用している場合に掻痒行動が増加していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、アトピー性皮膚炎マウスにおける中枢性の痒み増悪反応に関与する”脳部位”を特定するため、薬物の標的となる受容体が発現した限局した部位が関与するとの仮説を立て検討を行った。結果的に、検討した部位が単独で関与する知見は得られなかったものの、薬物の作用部位は脳内であることが再確認でき、次年度以降の方針を立てることができた。また、その他の検討から、アトピー性皮膚炎モデルマウスの自発的な掻痒行動にアロプレグナノロンが関与する可能性を示す結果を得たことから、全体としておおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
当初、薬物を微量投与することにより関与する部位を同定し、その後、光遺伝学的手法を用いて、さらに検討を進める予定であった。しかしながら、今年度の検討結果から、限局した部位に絞って検討を行うのは不適当と思われるため、今後は、神経活動マーカーであるcFosの脳組織での発現パターンを網羅的に調べることにより、中枢性痒み増悪メカニズムを解析していく予定である。 また、アトピー性皮膚炎モデルマウスの掻痒行動に内因性に産生されたアロプレグナノロンをはじめとするニューロステロイドが関与するかを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究結果から、当初購入予定であった光遺伝学的手法を用いた実験に必要な機器を購入する必要性がなくなったこと、および実験動物購入などの費用は他の研究費で賄うことができたため。次年度以降では、掻痒行動測定に必要な機器を整備し、病態モデルマウスを用いた行動実験を大規模で行う。
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