アトピー性皮膚炎では、アルコール摂取や夜間・睡眠時に痒みが一過性に増強することから何らかの中枢神経系の機能調節異常の関与が示唆されるが、そのメカニズムはほとんど明らかではない。我々はこれまでに、エタノールやバルビツール酸系薬などの催眠作用のある薬物をアトピー性皮膚炎モデルマウスに脳内投与すると掻痒行動が顕著に増強すること、また、それらの薬物と類似した作用を示す生体内物質アロプレグナノロンが脳内で増加した場合にも掻痒行動が増加することを見出した。本研究の目的は、アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて、慢性病態における脳内痒み増悪機構を解明することである。 今年度は、昨年度に引き続き、アロプレグナノロン以外のニューロステロイドと掻痒行動との関連を検討した。1)アロプレグナノロン(Allo-P)と類似した薬理作用を示すことが知られているプレグナノロン(P)、テトラヒドロデオキシコルチコステロン(THDOC)およびアロテトラヒドロデオキシコルチコステロン(Allo-THDOC)をアトピー性皮膚炎モデルマウスの脳内に同用量(5μg/site)投与し、掻痒行動の程度を比較したところ、Pの投与ではAllo-Pと同様に掻痒行動が増加した。また、THDOCおよびAllo-THDOCの投与では掻痒行動が増加する傾向がみられた。2)アロプレグナノロンと相反する作用を示すニューロステロイド(プレグネノロン硫酸エステルPREGSやデヒドロエピアンドロステロン硫酸エステルDHEASなど)が掻痒行動を抑制するか否か検討した。アトピー性皮膚炎モデルマウスの脳内にPREGSおよびDHEASを5μg/siteの用量で投与したが自発的掻痒行動は有意に抑制されなかった。以上の検討から、アトピー性皮膚炎マウスの痒み行動に影響を及ぼす生体内物質をいくつか明らかにした。
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