研究課題/領域番号 |
19K07335
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
服部 文幸 関西医科大学, 医学部, 教授 (50398624)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒトiPS細胞 / 心筋細胞 / 成熟 |
研究実績の概要 |
ヒトiPS細胞から分化させた様々な細胞種を創薬応用するにあたって、共通する最大の問題点の一つは、これらが体細胞としての成熟性が低いために、薬剤候補物質の安全および有効性の推定に限界が生じることである。本研究代表者は、ヒトiPS細胞由来心筋細胞の移植による心臓再生医療を開発する中で、これらの未熟性を改善する方法を探索した。この結果、特定の発生段階において心筋細胞の成熟におけるスイッチがオンになるという新しい知見を得た。本研究では、心筋細胞成熟化に必須なスイッチの構成要素を明らかにしようと試みている。心臓は、心筋細胞とこれよりも数の多い非心筋細胞によって構成されている。これゆえ、心臓全体を用いた遺伝子発現の比較解析では、心筋細胞の遺伝子変化が見落とされたり、非心筋細胞における変化を心筋における遺伝子発現変化と混同する可能性がある。我々が開発したミトコンドリア含有量を指標としセルソーターにより心臓から心筋細胞と非心筋細胞を分取精製する方法を強みとして、先ず、成熟スイッチの一つが存在する発生時期の前後で心筋細胞を精製し、網羅的遺伝子発現の比較解析を実施した。これらの比較の結果、スイッチを跨ぎ、4倍以上の差異を示す874遺伝子を見出し、これらの遺伝子調節における上流解析を実施した。上流解析とは、過去の文献情報から、遺伝の調節に関わるシグナル伝達機構や外部刺激を選出するバイオインフォーマティクス解析である。この解析から、18の外部刺激因子が予測された。これらの因子を精製したヒトiPS細胞由来心筋細胞に添加したところ、様々な形態的変化を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心臓は、心筋細胞とこれよりも数の多い非心筋細胞によって構成されている。これゆえ、心臓全体を用いた遺伝子発現の比較解析では、心筋細胞の遺伝子変化が見落とされたり、非心筋細胞における変化を心筋における遺伝子発現変化と混同する可能性がある。我々が開発したミトコンドリア含有量を指標としセルソーターにより心臓から心筋細胞と非心筋細胞を分取精製する方法を強みとして、先ず、成熟スイッチの一つが存在する発生時期の前後で心筋細胞を精製し、網羅的遺伝子発現の比較解析を実施した。これらの比較の結果、スイッチを跨ぎ、4倍以上の差異を示す874遺伝子を見出し、これらの遺伝子調節における上流解析を実施した。上流解析とは、過去の文献情報から、遺伝の調節に関わるシグナル伝達機構や外部刺激を選出するバイオインフォーマティクス解析である。この解析から、18の外部刺激因子が予測された。これらの因子を精製したヒトiPS細胞由来心筋細胞に添加したところ、様々な形態的変化を見出した。さらに組み合わせによって効果を検証する必要があり、膨大な組み合わせが生じる。ヒトiPS細胞由来心筋細胞に与えた変化が成熟スイッチをオンに出来たためであるかどうかを、実際に移植実験を行う前に判断する必要がある。上記ラット心筋における遺伝子比較アレイで10倍以上変化した185遺伝子に関して、ヒトiPS細胞由来精製心筋細胞由来mRNA、ヒト発生前期胎児心臓由来mRNA、ヒト発生後期胎児心臓由来mRNA、成人ヒト心臓由来mRNAを入手し、ヒトにおける遺伝子発現変化を確認した。この結果、未熟マーカー13種、成熟マーカー16種を選定した。
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今後の研究の推進方策 |
スイッチ前後にあたる精製したラット心筋細胞を用いて実施した独自の網羅的遺伝子発現の比較解析と、これに続く上流解析から予見された18の外部刺激因子を見出した。これらの因子単独で精製したヒトiPS細胞由来心筋細胞に添加したところ、様々な形態的変化を見出した。さらに組み合わせによって効果を検証する必要があり、膨大な組み合わせが生じる。上記ラット心筋における遺伝子比較アレイで10倍以上変化した185遺伝子に関して、ヒトiPS細胞由来精製心筋細胞由来mRNA、ヒト発生前期胎児心臓由来mRNA、ヒト発生後期胎児心臓由来mRNA、成人ヒト心臓由来mRNAを入手し、ヒトにおける遺伝子発現変化を確認し、未熟マーカー13種、成熟マーカー16種を選定した。今後は、この選定した遺伝子発現の変化を、心筋成熟スイッチ候補因子群の単独および組み合わせによって添加した心筋細胞において測定する。さらに、最も成熟マーカーを増強させ、未熟マーカーを減少させた因子群を用いて処理したヒトiPS細胞由来心筋細胞を、親生仔マウス心臓や成体マウス心臓へ移植し、移植後の変化を観察することで、成熟スイッチの効果を検証する。
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