研究課題
本研究では、パーキンソン病の危険因子としての炎症性腸疾患に着目し、「腸炎症に起因する脳ペリサイトの機能異常が病態原因物質であるαシヌクレインの脳内蓄積を惹き起こす」と考え、脳ペリサイトの異常化に関わる責任分子・機序を明らかにし、脳ペリサイトを標的とした治療法の開発を目的とする。脳ペリサイトはパーキンソン病患者脳で広範囲に認められるレビー小体の主要構成成分の線維化αシヌクレインに応答して、炎症性メディエーター(IL-1β、IL-6、MCP-1、MMP-9、TNF-α)を産生した。これはToll様受容体(TLR)阻害薬TAK-242で阻害されたことから、線維化αシヌクレインがTLR4を介して脳ペリサイトの炎症性メディエーター産生を惹き起こすことが示唆された。さらに、これらの変動に相関して脳ペリサイトのP糖タンパク質(P-gp)発現量も増加したことから、この脳ペリサイトのP-gp発現量増加の病態生理学的な役割を検討した。siRNAを用いて脳ペリサイトのP-gp発現量を抑制したところ、線維化αシヌクレインによるIL-1β、IL-6、およびMMP-9 mRNA発現量増加が阻害された。これはP-gpが脳ペリサイトの炎症性メディエーター産生を制御していることを示唆する。デキストラン硫酸(DSS)飲水による潰瘍性大腸炎モデルマウスにおいて運動障害などのパーキンソン病様症状が認められなかったが、脳血管でのP糖タンパク質(P-gp)の発現量が増大することを明らかにした。脳ペリサイトは脳血管構成細胞であることから、炎症性腸疾患における脳ペリサイトのP-gp発現増加は、線維化αシヌクレインによる脳内炎症を増悪させる危険因子であることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Frontiers in Cellular Neuroscience.
巻: 15 ページ: 661838
10.3389/fncel.2021.661838. eCollection 2021.