研究課題
ミトコンドリアにおいてシステインから合成される硫黄代謝物(パースルフィドなど)が、アミノアシルtRNA酵素の一つであるCARS2や硫化水素キノン還元酵素(sulfide-quinone reductase, SQR)によって産生・代謝され、エネルギー代謝に関与することが示唆されている(Akaike et al., Nature Commun. 2017)。これは、生物が酸素のみならず硫黄代謝物を利用してエネルギー代謝を営むことを意味している(イオウ代謝・呼吸)。この硫黄代謝の生体内における機能を分子レベルでのメカニズムを明らかにするため、CARS2、SQRの遺伝子改変マウスの作製および解析を行った。CRISPR/Casシステムを用いた精緻なゲノム編集により、パースルフィド活性のみを欠損したパースルフィド不活性化(CARS2点変異)マウス、さらにミトコンドリア移行シグナルを欠損したミトコンドリア選択的SQR欠損マウス(SQR欠損マウス)の作製に成功した。CARS2点変異マウスは胎生致死を示し、SQR欠損マウスは生後3週間以降より成長遅延を示し生後3ヶ月以内に死亡した。解析を進めたところ、これらの遺伝子改変マウスはミトコンドリアにおける硫黄代謝異常を認め、硫黄代謝・呼吸が選択的に抑制された極めてユニークな硫黄代謝不全(エネルギー代謝異常)マウスの開発に成功した。CARS2点変異マウスは胎生致死を示すので、成体での解析が困難であるが、トランスジェニックマウスによるレスキュー法を現在進めており、さらに他の硫黄代謝酵素群であるETHE1、3MST、TSTの遺伝子改変マウスの作製も完了している。引き続き、これらの遺伝子改変マウスを詳細に解析することで硫黄代謝・呼吸の生体内における機能を明らかにする。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
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