研究実績の概要 |
Rasファミリーの低分子量GTP結合タンパク質RalはRalAとRalBからなり、細胞の増殖、成長、遊走等、多様な機能を担っている。Ralの恒常的な活性化はがん化、浸潤・転移に重要である。われわれは、これまでにRalの不活性化因子、Ral GTPase-activating protein (RalGAP)を分子同定し、ノックアウトマウスを用いた解析によりRalGAPの触媒サブユニットの1つRALGAPA2の発現喪失によるRalの異常な活性化が膀胱がんの浸潤・転移に重要であることを明らかにした。本課題では、RALGAPA2の発現が前立腺がんでも低下しており、前立腺がん細胞の浸潤性に関わっていること、およびマウス前立腺がんモデルにおいてRalgapa2の喪失が前立腺がんの浸潤を促進することを明らかにした(Uegaki et al, Carcinogenesis, 2019)。また、口腔がん患者検体においてRALGAPA2の発現が正常上皮に比べがん組織で低下しており、RALGAPA2の発現が低い口腔がん患者は生存率が低下していることを報告した(Gao et al, J Dent Res)。がん組織におけるRALGAPA2の発現低下にはRALGAPA2遺伝子のDNAメチル化やヒストン修飾が関与することが考えられた。大腸がんにおいてRALGAPA2の発現低下に伴うRalの活性化が、MMPの発現やインフラマソームの活性化を介してがんの浸潤を促進することを明らかにした(Iida et al, Cell Mol Gastroenterol Hepatol, 2020)。
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