研究課題
臓器および個体サイズの制御は、生物の発生および恒常性維持に不可欠であり、サイズ制御の破綻はがんなどの疾患の発症に直結する。これまで研究代表者はメダカ変異体の解析から、YAPがアクチン重合を適切に制御し、細胞張力を正常に保つことで立体的な臓器構築を司ることを見出した [Nature 521: 217-221 (2015)]。そこで本研究では、小型魚類を用いて臓器サイズを規定するアクチン重合制御因子を同定するとともに、YAPによるアクチン重合のターンオーバーの制御メカニズムを精査し、YAP-アクチンシグナルによる臓器・個体サイズの制御メカニズムを解明することを最終目標とする。本年度は、YAPメカノホメオスターシスの分子基盤を明らかにする目的で、モルフォリノを用いた遺伝子ノックダウン法によりメダカのアクチン脱重合分子群 (Capz, Gelsolin, Cofilin) の機能解析を行った。アクチン脱重合分子群のモルフォリノをメダカ受精卵にインジェクションした結果、Capzbもしくはcofilin2のモルフォリノを注入したメダカ胚は原腸形成期の後まで生存した。Capzはアクチンの+端に結合することでアクチン重合を阻害する働きを持つ。そこでCapzbのモルファントにおいてqPCR解析を行った結果、YAPの標的遺伝子の発現量がコントロールのメダカと比べて大きく上昇していることを見出した。さらにCapzbが組織サイズの制御に関与する可能性を検討するため、Capzbのモルファントの詳細な観察を行った。その結果、Capzbのモルファントでは耳胞が拡大している傾向が認められた。今後サンプル数を増やし再現性を検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究実施計画の通り、アクチン脱重合促進因子に対してノックダウン解析を行い、臓器サイズの調節に関与する候補因子の精査が進行していることから、おおむね順調に本研究課題は進展していると考えている。
今後は、臓器サイズを規定するアクチン重合制御因子のノックアウトフィッシュを解析し、ノックアウトフィッシュの表現型を臓器サイズの観点から検証する。さらに野生型フィッシュとノックアウトフィッシュの内臓組織の一部を切除し、組織再生能力の比較解析を行う。
YAPメカノホメオスターシスの分子基盤を支える因子のノックアウト(KO)フィッシュの樹立に当初予定より時間を要しており、KOフィッシュの機能解析に用いるための試薬の購入を見送ったため未使用額が生じた。この未使用額については令和2年度に計上した分子生物学実験試薬の購入費と併せて使用する予定である。
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