研究課題/領域番号 |
19K07352
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
浅岡 洋一 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (10436644)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アクチン重合 / 臓器・個体サイズ制御 / YAP / 小型魚類 / メカノホメオスターシス / 力学計測系 |
研究実績の概要 |
臓器および個体サイズの制御は、生物の発生および恒常性維持に不可欠であり、サイズ制御の破綻はがんなどの疾患の発症に直結する。これまで研究代表者はメダカ変異体の解析から、YAPがアクチン重合を適切に制御し、細胞張力を正常に保つことで立体的な臓器構築を司ることを見出した [Nature 521: 217-221(2015)]。現在、世界中でES細胞やiPS細胞を用いた臓器作成に関する研究が盛んであるが、実際に臨床応用可能なサイズを有する機能的な臓器の構築は未だ困難な状況である。近年、試験管内でES細胞から網膜原基の眼杯組織を立体構築する画期的な自己組織化技術が国内で報告されており [Sasai, Nature (2013)]、今後、眼杯をはじめとした立体組織のサイズ制御の解析には、YAP-アクチンシグナルの分子基盤の理解と生体内での力学計測技術が不可欠である。そこで本研究では、小型魚類を用いてYAP-アクチンシグナルの臓器構築過程での役割をin vivo力学計測系を用いて理解することを目標とする。 本年度は、ゼブラフィッシュ尾ヒレ再生系を用いて、長期タイムラプスイメージングを行うための麻酔液還流システムを樹立し、ヒレ組織に磁性流体の油滴を注入し磁場をかけてその変形を計測することで、生体組織における力学特性(粘弾性)の実測に成功した。これらの計測手法の確立は、YAP-アクチンシグナルがどのように3次元立体臓器の構築過程において組織の力学特性を統御しているのかという未知のメカニズムの解明につながる成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画の通り、ゼブラフィッシュ生体組織における力学特性(粘弾性)の実測に成功したことから、おおむね順調に本研究課題は進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
魚類はひれはもとより心臓や網膜を含め多くの組織・臓器が再生可能である。この魚類の組織修復能力のメカニズムにYAP-アクチン重合シグナルが果たす役割について、in vivo における組織力学特性の計測を通じてさらに深く掘り下げていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
小型魚類の組織修復能力のメカニズムにYAP-アクチン重合シグナルが果たす役割の解析に当初予定より時間を要しており、力学計測などの解析に用いるための試薬の購入を控えたため未使用額が生じた。この未使用額については令和4年度に計上した消耗品類の購入費用と併せて使用する予定である。
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