研究課題
臓器および個体サイズの制御は、生物の発生および恒常性維持に不可欠であり、サイズ制御の破綻はがんなどの疾患の発症に直結する。これまで研究代表者はメダカ変異体の解析から、YAPがアクチン重合を適切に制御し、細胞張力を正常に保つことで立体的な臓器構築を司ることを見出した [Nature 521: 217-221(2015)]。現在、世界中でES細胞やiPS細胞を用いた臓器作成に関する研究が盛んであるが、実際に臨床応用可能なサイズを有する機能的な臓器の構築は未だ困難な状況である。近年、試験管内でES細胞から網膜原基の眼杯組織を立体構築する画期的な自己組織化技術が国内で報告されており [Sasai, Nature (2013)]、今後、眼杯をはじめとした立体組織のサイズ制御の解析には、YAP-アクチンシグナルの分子基盤の理解と生体内での力学計測技術が不可欠である。そこで本研究では、小型魚類を用いてYAP-アクチンシグナルの臓器構築過程での役割をin vivo力学計測系を用いて理解することを目標とする。昨年度はメダカYAP変異体へ磁性流体の油滴を微量注入し、磁場を加えて変形させることで細胞組織の内部に力を加え、その応答を観察することで生体組織内部での硬さを計測する系を樹立した。本年度はさらに臓器構築過程でのYAPメカノホメオスターシスの理解のために、磁性ビーズを用いた組織の力学計測系の立ち上げを試みた。具体的にはゼブラフィッシュ胚の尾ヒレに磁性ビーズを微量注入し、外部磁場を加えてビーズの挙動を定量的に解析することにより生体組織内部での硬さを計測する系がほぼ確立できた。
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PLOS ONE
巻: 17 ページ: e0269077
10.1371/journal.pone.0269077