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2020 年度 実施状況報告書

トリアシル型リン脂質の生理機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 19K07353
研究機関香川大学

研究代表者

上田 夏生  香川大学, 医学部, 教授 (20193807)

研究分担者 宇山 徹  香川大学, 医学部, 助教 (30457337)
坪井 一人  川崎医科大学, 医学部, 講師 (80346642)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードN-アシルホスファチジルエタノールアミン / N-アシルエタノールアミン / ホスホリパーゼA2 / 酵素 / 脂質メディエーター / リン脂質
研究実績の概要

「トリアシル型リン脂質」であるN-アシルホスファチジルエタノールアミン(N-アシル-PE)は、脂質メディエーターの一種である脂肪酸エタノールアミド(N-アシルエタノールアミン)の前駆体として知られるが、生理的意義については不明な点が多い。本研究では、ホスファチジルエタノールアミン(PE)のアミノ基に別のリン脂質分子から脂肪酸鎖を転移してN-アシル-PEを合成するN-アシルトランスフェラーゼ活性を有することが明らかになっているcPLA2εとPLAAT-1に焦点を絞り、N-アシル-PEの哺乳動物における存在意義とともに、両酵素の役割の違いを解明することを目的とする。
2年目の令和2年度は、以下の研究を実施した。
1)cPLA2εとPLAAT-1の遺伝子欠損マウスを安定的に飼育及び繁殖させ、通常の飼育環境では、両マウスの形態や行動に明らかな異常を認めないことを明らかにした。
2)PLAAT-1の遺伝子欠損マウスに高脂肪食を投与したときの体重増加が、野生型マウスと比較して少ない傾向が見られたが、その差が有意であるか否か、引き続き検討を進めている。
3)cPLA2は6種類のイソフォームから成ることから、cPLA2ε以外のα、β、γ、δ、ζの5種類がN-アシル-PEの代謝に関与する可能性について検討した。その結果、cPLA2ε以外のイソフォームには、N-アシル-PEの生成能、すなわちN-アシルトランスフェラーゼ活性は認められなかったが、N-アシル-PEを加水分解してN-アシル-リゾPE及びグリセロホスホ-N-アシルエタノールアミンを生成する活性を示すものが見出され、N-アシル-PEからN-アシルエタノールアミンを生成する経路に係わる可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究課題に沿って、トリアシル型リン脂質のN-アシルホスファチジルエタノールアミンを生成するN-アシルトランスフェラーゼ活性を有する主な酵素であるcPLA2εとPLAAT-1の遺伝子欠損マウスを入手または作出し、これらを安定的に飼育及び繁殖できていること、そしてこれらのマウスを用いた実験に着手していること等から、現在までの進捗状況はおおむね順調であると判断した。

今後の研究の推進方策

遺伝子欠損マウスの飼育及び繁殖は順調であることから、当初の研究計画に沿って、今後の研究を推進したい。遺伝子欠損マウスへの高脂肪食の投与による影響について詳しい検討を行う予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2020 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] N-アシルエタノールアミンの機能と生合成機構2020

    • 著者名/発表者名
      坪井一人,宇山徹,上田夏生
    • 雑誌名

      生化学

      巻: 92 ページ: 666-679

    • DOI

      10.14952/SEIKAGAKU.2020.920666

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 明らかになり始めた生理活性脂質N-アシルエタノールアミンの生合成機構.N-アシル転移酵素の構造と機能2020

    • 著者名/発表者名
      宇山徹,上田夏生
    • 雑誌名

      化学と生物

      巻: 58 ページ: 599-605

    • 査読あり
  • [学会発表] N-アシル-ホスファチジルエタノールアミンの生成におけるcPLA2εの細胞内基質の検討2020

    • 著者名/発表者名
      宇山 徹,Smriti Sultana Binte Mustafiz,森戸 克弥,高橋 尚子,川合 克久,Zahir Hussain,坪井 一人,荒木 伸一,山本 圭,田中 保,上田 夏生
    • 学会等名
      第62回日本脂質生化学会
  • [学会発表] N-アシルエタノールアミンの加水分解における内在性酸性セラミダーゼの関与2020

    • 著者名/発表者名
      坪井 一人,田井 達也,山下 量平,宇山 徹,岡本 蓉子,郷 慎司,渡邉 悦子,Iffat Ara Sonia Rahman,芳地 一,田中 保,岡本 安雄,徳村 彰,松田 純子,上田 夏生
    • 学会等名
      第62回日本脂質生化学会
  • [学会発表] バイオファクターであるN-アシルエタノールアミンの生合成に関わるcPLA2εの機能解析2020

    • 著者名/発表者名
      宇山 徹,Smriti Sultana Binte Mustafiz,森戸 克弥,高橋 尚子,川合 克久,Zahir Hussain,坪井 一人,荒木 伸一,山本 圭,田中 保,上田 夏生
    • 学会等名
      日本ビタミン学会第72回大会
  • [学会発表] Phospholipid species used for the Ca2+-dependent formation of N-acyl-phosphatidylethanolamine by cPLA2ε2020

    • 著者名/発表者名
      Uyama, T., Mustafiz, S.S.B., Morito, K., Takahashi, N., Kawai, K., Hussain, Z., Tsuboi, K., Araki, N., Yamamoto, K., Tanaka, T., Ueda, N.
    • 学会等名
      30th Annual Symposium of the International Cannabinoid Research Society
    • 国際学会
  • [学会発表] 脳虚血モデルでのN-アシル-ホスファチジルエタノールアミンの蓄積はcPLA2εによって引き起こされる2020

    • 著者名/発表者名
      宇山 徹,Zahir Hussain,森戸 克弥,田中 保,太田 健一,上野 正樹,村上 誠,上田 夏生
    • 学会等名
      第93回日本生化学会大会
  • [学会発表] 脂質メディエーターであるN-アシルエタノールアミンの生合成に係わるN-アシルトランスフェラーゼの機能解析2020

    • 著者名/発表者名
      上田 夏生,Smriti Sultana Binte Mustafiz,Zahir Hussain,宇山 徹
    • 学会等名
      第365回脂溶性ビタミン総合研究委員会
  • [備考] 香川大学医学部 生体分子医学講座 生化学 ホームページ

    • URL

      http://www.med.kagawa-u.ac.jp/~biochem/index.html

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公開日: 2021-12-27  

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