研究課題/領域番号 |
19K07354
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
李 正花 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 客員准教授 (80398239)
|
研究分担者 |
山村 研一 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 客員教授 (90115197)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 家族性アミロイドポリニューロパチー / トランスサイレチン / 優性遺伝病 / CRSIPR/Cas9 / 遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)は、トランスサイレチン(TTR)遺伝子の点突然変異により引き起こされる典型的なヒト優性遺伝病である。マウスTTR遺伝子のエクソンだけをヒトTTRエクソンでヒト化したFAPモデルマウスを用い、その肝臓内でヒト変異TTR遺伝子を破壊し、遺伝子治療が可能かどうかを検証するのが目的である。このため、実験計画としては、すでに作製していた野生型エクソンヒト化ヘテロマウス(Ttr+/hV30exon)から、①Ttr+/hV30exonの凍結胚からマウスを回復させ、交配による野生型ホモTtrhV30exon/hV30exonの作製と増産、②野生型ホモTtrhV30exon/hV30exonの受精卵とCRISPR/Cas9法によるヘテロマウス(TtrhV30exon/hM30exon)の作製、③TtrhV30exon/hM30exonの交配によるTtrhM30exon/hM30exonの作製と増産、④TtrhV30exon/hV30exonとTtrhM30exon/hM30exonの交配によるTtrhV30exon/hM30exonマウスの作製と増産、⑤TtrhV30exon/hM30exonマウスの肝臓内でCRISPR/Cas9法を用いてヒトTTR遺伝子の破壊を行い、治療できるかどうかを解析する計画である。今年度は、①Ttr+/hV30exonの凍結胚からマウスを回復させ、交配による野生型ホモTtrhV30exon/hV30exonの作製と増産、②野生型ホモTtrhV30exon/hV30exonの受精卵とCRISPR/Cas9法によるヘテロマウス(TtrhV30exon/hM30exon)の作製、③TtrhV30exon/hM30exonの交配によるTtrhM30exon/hM30exonの作製と増産まで達成し、順調に推移している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)野生型ヘテロTtr+/hV30exonのオスの精子とメスの卵子を用いて体外受精を行い、それらを仮親に移植し多数の子孫を得た。これらのマウスのジェノタイピングを行い、ホモTtrhV30exon/hV30exonを選別した。 (2)野生型ホモメスマウスTtrhV30exon/hV30exonの過剰排卵により得られた卵子と、野生型ホモオスマウスの精子を用いての体外受精により、多数のTtrhV30exon/hV30exonの受精卵を得た。この受精卵に、crRNA, tracrRNA, Cas9 mRNA, single strand DNA (ssDNA)を、すでに確立されている電気穿孔法にて導入した。注入後の受精卵は、仮親の卵管に移植し、産子を得た。生まれたマウスのジェノタイピングを行い、TtrhV30exon/hM30exonマウスを選別した。 (3)遺伝子治療実験には、ヒト患者と同じ遺伝子型を持つTtrhV30exon/hM30exonマウスを使用する予定である。上記(2)で得られたTtrhV30exon/hM30exonマウスを交配しただけでは、その1/4しかTtrhV30exon/hM30exonマウスにならないので、効率が悪い。そこで、まずはTtrhV30exon/hM30exonマウスの交配によりTtrhM30exon/hM30exonを得た。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒト患者のほとんどはヘテロ接合体TtrhVal30/hMet30である。遺伝子治療実験を行うには、このヒト患者と同じ遺伝子型を持つTtrhV30exon/hM30exonマウスをまず増産する必要がある。このためには、初年度で得られたTtrhV30exon/hV30exonとTtrhM30exon/hM30exonを交配することが一番効率の良い方法である。そこで、まずTtrhV30exon/hV30exonとTtrhM30exon/hM30exonをそれぞれ増産する。その後、TtrhV30exon/hV30exonとTtrhM30exon/hM30exonの卵子および精子を用いて体外受精を行う。この体外受精によれば、全てがTtrhV30exon/hM30exonの遺伝子型となる。これによりTtrhV30exon/hM30exonマウスを増産する。ついで、TtrhV30exon/hM30exonを用いて遺伝子治療実験を行う。このために、まずTTR遺伝子の翻訳開始部位をターゲットにしたsgRNA配列を含むpX330を構築する。ハイドロダイナミック法、つまりマウス体重の1/10量のDNA溶液(体重が20gなら、2ml)(pX330 50ug含む)を5-7秒以内に、6週齢のマウスの尾静脈から注入することでヒトTTR遺伝子を破壊する。注入後マウスは速やかに回復するので、必要に応じて2回目を行う。これらのマウスを用いてTTR遺伝子破壊頻度、血中TTR濃度の測定、上記のデータを総合し、TTR遺伝子の破壊の比率と血中TTR濃度との相関を解析し、遺伝子破壊による治療の可能性を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
必要な消耗品を購入しようとしたが、残額が12,045円となり、購入できず、次年度に繰り越したため。
|