研究課題
我が国の循環器疾患の死亡数は、がんに次ぐ第2位であり、心不全の5年生存率はがん全体よりも低い。近年、がんに対しては研究の著しい進歩により原因に基づいた分子標的治療が可能となったのとは対照的に、循環器病の発症・進展の分子病態の多くは未だ明らかでなく、現状では対症療法ともいえる治療にとどまっている。したがって、基礎研究による分子病態の解明および治療標的の探索は、喫緊の課題である。心不全とは、心臓のポンプ機能の破綻によって全身の灌流不全をきたし、日常生活に支障をきたす病態を指す。全世界的に近年増加の一途にあり、「心不全パンデミック」の到来が予想されているが、心不全発症の分子メカニズムには未だ不明な点が多い。なかでも、心不全に陥った心筋組織では、心筋の収縮単位である「サルコメア」自体の収縮性および拡張性が進行性に低下するが、その分子機構には未解明な点が多い。申請者は、心筋サルコメアにおけるアクチン制御因子Fhod3とミオシン制御因子cMyBP-Cの機能的結びつきが、アクトミオシン架橋の形成制御を通じてサルコメアの収縮性および拡張性に変調をもたらす可能性を提唱した。Fhod3は、最近の欧州の大規模コホート研究により明らかにされた肥大型心筋症の新しい疾患遺伝子だが、変異がどのようにして疾患の発症に結びつくのかは依然不明である。本研究では、Fhod3病因変異が特に集積している領域に注目してFhod3蛋白質の機能を解析して病態メカニズムを検討した結果、Fhod3蛋白質の心不全発症に関わる領域の分子特性の一端を明らかにすることができた。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
PLoS One
巻: 17 ページ: e0275751
10.1371/journal.pone.0275751
Molecular Pain
巻: 18 ページ: 1-12
10.1177/17448069221089784