研究課題/領域番号 |
19K07356
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
金 憲誠 帝京平成大学, 薬学部, 講師 (70469899)
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研究分担者 |
松尾 和彦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70599753)
高橋 美樹子 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (90324938)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 一次繊毛形成 / 中心小体サテライト |
研究実績の概要 |
当該年度はCG-NAPが一次繊毛の形成に関わる中心小体サテライト(CS)の細胞内での挙動および機能をどのように制御しているのかを明らかにするため以下のような実験を実施した。 生化学的手法を用いた解析を行い、PCM1がCG-NAPのPACTドメインを介して結合することを明らかにした。また、種々のCG-NAP欠失変異体を用いてCG-NAP KO細胞の①PCM1ゴルジ体局在、②ゴルジ微小管形成、③Rab8の中心体へのリクルートなどに関するレスキュー実験を行った。その結果、CG-NAPはゴルジ微小管の形成とPCM1のゴルジ体周辺への局在の両方に必要であり、いずれを欠いてもRab8の中心体へのリクルートは回復せず一次繊毛の形成不全を引き起こすことがわかった。Delta-visionを用いた2波長time-laps imaging解析から、mcherry-CG-NAPとPCM1-GFPは細胞質の動的な集団と、ゴルジ体上の比較的静的な集団がいることがわかり、そのいずれにおいても両者は挙動を共にしていることが確認できた。これらの結果からCG-NAPによるPCM1のゴルジ体局在は一次繊毛形成において重要な意味を持つことが推察された。その生物学的意義を明らかにするためCG-NAP KOにおいて種々のCSコンポーネントの細胞内局在について調べた。その結果、CG-NAP KO細胞ではCEP290やユビキチンE3リガーゼであるMIB1が中心体へ過剰に蓄積していることを見出した。またMIB1の下流分子である中心体Talpid3の低下も見られた。以上の結果からCG-NAPはPCM1をゴルジ体に局在させることでCSの中心体への集積を制限し、それが正しい一次繊毛の形成に必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に得られた実験結果は研究課題として設定した「CG-NAPによる中心小体サテライト制御の分子メカニズム」の一端を明らかにできたのではないかと考えている。研究計画段階では一次繊毛形成過程におけるCG-NAPによるPCM1のゴルジ体局在の生物学的意義については推測の域を出なかったが、PCM1の下流因子であり一次繊毛形成において抑制的な働きを持つMIB1の過剰蓄積(CG-NAP KO細胞での)を明らかにできたことは、本研究課題においては大きな進展であったといえる。またこれまでの研究結果をまとめた投稿準備にも取り掛かっていることから、進捗状況はおおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究結果から、CG-NAPによるPCM1のゴルジ体への繋留は一次繊毛形成において抑制的な働きを持つMIB1の中心体へのターゲティングを制限するために必要であることが示唆された。今後は次のような計画に沿って研究を行っていく。 ①研究分担者である松尾和彦(京都府立医大・助教)と協力し、CG-NAP KO細胞では繊毛小胞のdistal appendageへの融合が阻害されているかを電子顕微鏡解析によって明らかにし、既に得られたデータとの整合性を図る。②CG-NAP KOにおけるMIB1下流因子Talpid3のポリユビキチン化に関する解析を行う。E3リガーゼであるMIB1は中心体Talpid3のポリユビキチン化を促進する。CG-NAP KOで見られた中心体Talpid3量の低下は、ポリユビキチン化に伴う分解に起因するのかを検証する。③CG-NAPが細胞質ダイニンによるPCM1の輸送にどのように関与しているかを解析する。予備的実験から一次繊毛形成時にCG-NAPはダイニン依存的に中心体へと集積することが示唆されていたため、当初はPCM1と共に細胞質ダイニン依存的に中心体へと輸送されているのではないかと考えていた。しかし、上述の当該年度の研究結果から、CG-NAPがダイニンによるPCM1の中心体方向への輸送を抑制する方向にも働いているという可能性も浮上した。これらを踏まえ、今後は研究分担者である高橋美樹子(帝京平成大学・教授)と協力し、CG-NAP KOにおけるダイニンモーターの動態を主にイメージングによって明らかにしていくことで、これらの可能性を検証しモデルを提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度末の予算支出の調節が上手く行かなかったため生じた残額であり、次年度の抗体購入へあてる。
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