研究課題
本年度は、吸入麻酔薬による免疫・炎症制御のメカニズムの一端を明らかにすることができた。一般に麻酔薬には抗炎症作用があることが知られているが、その分子メカニズムは十分に明らかにされていない。申請者は以前、静注麻酔薬のプロポフォールがLTB4産生の責任酵素である5ーリポキシゲナーゼ(5-LO)に結合し、LTB4産生を抑制することを見出している。そこで今回、吸入麻酔薬イソフルランとセボフルランについて検討を行った。マウスの腹膜炎モデルでは、腹腔内への炎症細胞の浸潤、腹腔内の脂質メディエーターやサイトカイン産生量の上昇が観察される。吸入麻酔薬イソフルランやセボフルランを前投与することによって、ロイコトリエンなどの炎症性脂質メディエーターの産生量が減少した。そこで、ロイコトリエン産生の責任酵素である5-LOに直接結合するかを検討したが、吸入麻酔薬と5LOは直接結合しなかった。そこで、リポポリサッカライド(LPS)の受容体であるTLR4-MD2複合体に結合するかを検討したところ、吸入麻酔薬がTLR4-MD2複合体に直接結合し、TLR4シグナルを減弱することを発見した。LPS-TLR4シグナルはロイコトリエンの産生量を増加させるため、吸入麻酔薬はLPS-TLR4シグナルの減弱によってロイコトリエンの産生量を減弱させることが示唆された。今後は、麻酔薬がTLR4-MD2複合体の活性をどのように阻害するか、その分子メカニズムを明らかにしたいと考えている。また、抗炎症能が報告されている脂質メディエーターの標的分子についても、今後解析を行い、当初の目的を達成したいと考えている。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究目的とは異なるが、麻酔薬の抗炎症作用の分子機序の一端を明らかにできたため
抗炎症性メディエーターの解析についても、今後行っていく予定である。
予定していた実験が年度内に行えなかったため。残額は消耗品の購入に使用する
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 5件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 10件) 備考 (1件)
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