研究課題
外科手術などに広く用いられている麻酔薬には、一般に抗炎症作用があることが示唆されているが、その作用メカニズムの詳細は未だ明らかでない。麻酔薬に抗炎症作用があることは、腹膜炎などの手術の副作用を抑制するために有効であり、その機序を明らかにすることは、より効果的な治療を行うために有用である。研究代表者は以前、5ーリポキシゲナーゼ(5-LOX)が静注麻酔薬であるプロポフォールに直接結合し、ロイコトリエンB4の産生を抑制することを見出している。プロポフォールの一位の水酸基は、麻酔作用に重要であることが知られているが、この水酸基が5-LOXとの結合にも重要であるか否かを検討した。プロポフォールの一位の水酸基をフッ素に置換したフロポフォールを用いて、5-LOX活性に対する影響を検討したところ、酵素活性に部分的に影響を与えるが、必ずしも必須ではないことがわかった。フロポフォールの光親和性プローブ(Azi-fropofol)を用いて5-LOXとの結合部位を検討したところ、5-LOXとプロポフォールとの二箇所の結合部位のうち、Phe-187には結合したが、Val-431には結合しなかった。5-LOXは、アラキドン酸から中間体である5-HPETEを経てLTA4を生合成する酵素であるが、興味深いことに、フロポフォール阻害によって5-HPETEの蓄積が観察された。この実験結果は、Phe-187の部位が、5-HPETEからLTA4への変換に関わることを示唆している。また本研究によって、プロポフォールの一位の水酸基が様々なタンパク質との結合に関わる可能性が明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
麻酔薬の抗炎症作用の解明が順調に進んでいるため。
新たな抗炎症作用を有する可能性のある分子を見つけており、その構造と生理活性の解明を進める。
新型コロナウイルス蔓延のため、研究できない期間があったため。消耗品の購入に使用する。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Prostaglandins and Other Lipid Mediators
巻: 152 ページ: 106502
10.1016/j.prostaglandins.2020.106502.
Cell Mol Immunol.
巻: 未定 ページ: 未定
10.1038/s41423-020-00559-7.
PLoS One
巻: 15(11) ページ: e0241869
10.1371/journal.pone.0241869.
Diabetes
巻: 69 ページ: 724-735
10.2337/db19-0550.
FASEB J.
巻: 34 ページ: 8749-8763
10.1096/fj.202000041R.
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 525 ページ: 909-914
10.1016/j.bbrc.2020.03.037.
巻: 34(10) ページ: 13949-13958
10.1096/fj.202001148R.
Int. J. Mol. Sci.
巻: 21(22) ページ: 8435
10.3390/ijms21228435.
http://plaza.umin.ac.jp/j_bio/publication.html