研究課題
非特異的多発性小腸潰瘍症は、若年時に発症する小腸潰瘍症であり、長い間原因不明であったが、最近になってプロスタグランジン(PG)輸送体(SLCO2A1)の遺伝子変異に起因する疾患であることが明らかにされた。しかし、非特異的多発性小腸潰瘍症(CEAS)の病態は十分に明らかでなく、発症する原因も不明である。順天堂医院 小児科に来院した8才の男児の小腸カプセル内視鏡検査の結果、PG輸送体の変異に起因するSLCO2A1関連小腸症(CEAS)と診断した。さらに男児の姉(12才)も間欠的腹痛を訴えたため、小腸カプセル内視鏡を行うことでCEASであると診断した。父、母、および次女とともにSLCO2A1遺伝子の配列を解析したところ、父型のアレルには既知の遺伝子変異が、母型のアレルに新規の遺伝子変異があることを発見した。次に尿中のPG代謝物量を質量分析計で解析したところ、 8才の男児と12才の女児ではPG代謝物量が増加していることがわかった。SLCO2A1の新規変異によるPG輸送機能を調べるために、新規変異型SLCO2A1を発現する細胞株を作成した。変異型SLCO2A1は、正常なSLCO2A1と同様に細胞膜上に発現するが、PGの細胞内への取り込み能がほとんどないことがわかった)。以上の結果は、本研究で同定した新規のSLCO2A1変異によってPG量が低下することで、小腸潰瘍症を発症することを示唆している。尿中のPG代謝物を測定することは、非侵襲的であり、CEASを迅速に診断する上で有利である。本研究で確立した変異型SLCO2A1の機能解析法、及び質量分析計を用いた尿中代謝物の測定は、患者さんの負担の少ない方法で病態の解明や治療法の開発につながることが期待される。
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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