研究課題/領域番号 |
19K07359
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
赤木 玲子 安田女子大学, 薬学部, 教授 (50150967)
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研究分担者 |
宮本 崇史 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50740346)
井上 幸江 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 教授 (60159978)
北澤 健生 安田女子大学, 薬学部, 准教授 (70791490)
久保 貴紀 安田女子大学, 薬学部, 講師 (90435751)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | タイトジャンクション / バリア障害 / 遊離ヘム / ヘムオキシゲナーゼ-1 (HO-1) / 一酸化炭素 |
研究実績の概要 |
本研究は、消化管の出血に起因する遊離ヘム濃度の上昇がもたらすバリア障害の発症機序を解明することが目的である。2020年度に実施した研究成果を以下の2点にまとめた。 1. HO-1によるバリア機能修復メカニズムの解明 現在までに本研究の仮説である「高親和性ヘム結合物質COによるバリア調節機構」を解明するために、ヒト結腸癌細胞Caco-2にCO-releasing molecules (CORMs)を添加したところ、ヘムによるバリア障害からの回復が改善される結果を得ている。ヘム分解系律速酵素HOは生体内で唯一のCO産生系であることを踏まえて、CRISPR-Cas9法でHO-1をノックアウトしたCaco-2-HO-1KO を作成した。複数のクローンを用いてTrasepithelial electrical resistanceを測定したところ、ヘムによるバリア障害レベルが異なる結果が得られたため、ヘム添加によるHO-1誘導の消失を確認することにより再クローン化した。 2. ヘム結合TJAC構成タンパク質の網羅的探索 ヘム-アガロースを用いてCaco-2よりヘム特異的結合タンパク質を抽出し、SDS-PAGEにより分画した。無処置の細胞に比べてヘム生合成前駆体5-aminolevulinate (ALA)を添加を添加して培養した細胞で減少し、ヘム生合成阻害剤succinylacetone (SA)を添加して培養した細胞で増加する複数のバンドが得られたので、バリア機能の調節に関与するヘム結合タンパク質の候補としてMALDI-TOF MSを用いた解析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の核心的な問いである『タイトジャンクションタンパク質と結合したヘムは、HO-1によって分解された遊離ヘム由来のCOと配位することでTJACから解離され、その結果、バリア機能が修復されるのではないか?』は、Caco-2にヘム生合成前駆体ALAを添加することによりヘム添加と同様にバリア機能の著明な低下が認められたことにより、細胞内遊離ヘムがタイトジャンクションタンパク質と結合してバリア障害を起こすことは裏付けられたと考えている。2020年度までに樹立したCaco-2-HO-1KO細胞を用いて、遊離ヘムによるバリア障害の動態を野生型と比較検討しているところである。 ヘム結合タンパク質の分離同定については、候補となるタンパク質の絞り込み等の準備は整ったところであるが、この度のコロナ禍の影響を受けて、試薬の納入が遅れるなどの影響で予定が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度までの研究により、Caco-2細胞から抽出したタンパク質のうち、ヘム-アガロースを用いてヘム結合性タンパク質を吸着させ、ヘムの前駆体であるプロトポルフィリンIX (PPIX)で非特異的なタンパク質を洗浄した後、ヘムで溶出されるタンパク質を分離する条件検討を行った。今後、複数の候補タンパク質を質量分析(MALDI-TOF MS)を用いて解析することで、ヘム特異的結合タンパク質の同定を行う。同定したヘム結合TJAC構成タンパク質とヘムの結合については、Biacoreを用いて、結合・解離のスピードや結合強度などについて、詳細な検討を行う予定である。標的タンパク質が同定できれば、そのノックアウトCaco-2細胞を作成し、ヘムによるバリア障害の動態をCaco-2-HO-1KO細胞と比較検討する。さらに、ヘムによるHO-1の発現誘導に必要な転写因子の結合部位を除去したCaco-2細胞を樹立し、ヘムの添加によってHO-1の誘導がかからないようにする。これにより、ヘムとHO-1反応産物COについてヘムとの親和性を定量化し、HO-1によるバリア機能修復におけるCOの重要性を検討する予定である。
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