研究課題/領域番号 |
19K07365
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
堀家 慎一 金沢大学, 学際科学実験センター, 准教授 (40448311)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自閉症 / オキシトシン受容体 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
自閉症は,社会適応能力の障害やコミュニケーション障害,活動および興味の反復性を主徴とする広汎性神経発達障害であり,広義にはアスペルガー症候群,レット症候群,アンジェルマン症候群,脆弱性X症候群などが含まれる。双生児研究や家族歴研究からその背景には強い遺伝素因があることは明らかであり,10数個ものシナプス関連遺伝子が関与していると言われているが,未だその全容は明らかにされていない。こうした中,「オキシトシン」と呼ばれるペプチドホルモンが自閉症症状の軽減に有効であるという臨床報告がなされるようになった。オキシトシンは,もともと子宮収縮や乳汁分泌に関与する下垂体後葉ホルモンとして知られていたが,最近の研究で「他人への信頼」が増す効用があることが明らかとなっている。そこで,本研究ではOXTR遺伝子のエンハンサーのエピゲノム状態が遺伝的要因・内分泌要因・環境要因といった複合的な要因により,どのように変化し遺伝子発現に影響を与えるか解析することで神経発達障害発症における性差の分子基盤を明らかにする。当該年度は,樹立した自閉症モデルSH-SY5Y細胞の神経分化におけるOxtr遺伝子やAvpr遺伝子のエンハンサー領域のメチル化状態を解析した。その上,樹立した自閉症モデル細胞を性ホルモン(エストロゲンやジヒドロテストステロン)に曝露させ,Oxtr遺伝子やAvpr遺伝子の遺伝子発現変化やエピゲノム状態の変化を解析した。一方,自閉症モデルマウスであるCd38欠損マウス及びCd157欠損マウスにおけるOxtr遺伝子やAvpr遺伝子のエピゲノム状態の解析は,コロナ禍における緊急事態宣言等で,動物実験施設でのマウスの維持管理に遅れが生じたことにより解析が進んでいない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自閉症モデル細胞を用いたエピゲノム解析(メチル化解析,ChIP解析)に関しては,順調に進んでいるが,自閉症モデルマウスであるCd38欠損マウス及びCd157欠損マウスにおけるOxtr遺伝子やAvpr遺伝子のエピゲノム状態の解析は,コロナ禍における緊急事態宣言等で,動物実験施設でのマウスの維持管理に遅れが生じたことにより解析が進んでいない。しかしながら,現在,実験に使用するマウスは順調に確保できており,最終年度には全実験を終了できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度,自閉症モデルマウスであるCd38欠損マウス及びCd157欠損マウスにおけるOxtr遺伝子やAvpr遺伝子のエピゲノム状態の解析に遅れが生じたので,早急に実験をすすめる。その上で,最終年度に予定していた胎生期E11.5にバルプロ酸を投与するモデルおよびPolyI:Cを投与するモデル,LPSを投与するモデルにおけるエピゲノム解析も並行して実施する。また,ビスフェノールA(BPA)及びPCB曝露モデルについては,胎仔期7.5日目から16.5日目までの10日間200ug/kg/dayのBPA及びPCBを母親マウスに経口投与し,出生後28日後の大脳皮質からDNAを抽出し,Oxtr遺伝子やAvpr遺伝子のエンハンサー領域のメチル化状態を雌雄別に解析する予定。また,ChIP法によりエンハンサーに特有なヒストン修飾(H3K27ac, H3K4me)の状態やRT-qPCR法によりeRNA(エンハンサーRNA)の発現についても同様に解析する予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
自閉症モデルマウスであるCd38欠損マウス及びCd157欠損マウスにおけるOxtr遺伝子やAvpr遺伝子のエピゲノム状態の解析は,コロナ禍における緊急事態宣言等で,動物実験施設でのマウスの維持管理に遅れが生じたことにより,マウス飼育経費及びそれらの解析に係る費用を次年度に使用することとした。また,予定していた学会への参加やそれに係る旅費等についても,コロナ禍に伴い,学会が中止やオンライン化された事により,予定額の執行ができなかった。しかしながら,現在,実験に使用するマウスは順調に確保できており,最終年度には予定していた全実験を終了できると考えている。
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