研究課題
本研究ではMultiple Sclerosis(MS)におけるifitm3の関与・役割を明らかにするために炎症モデルであるクプリゾンモデルを用いて生化学的・神経化学的解析を行った。野生型マウスに普通餌またはクプリゾンを含む餌を6週間投与したところ、クプリゾン投与群では対照群に比較してMBPの発現が低下しており、クプリゾン投与による脱髄反応が生じていることを確認した。また、クプリゾン投与によるGFAPの発現上昇が認められ、炎症反応によるアストロサイトの活性化が確認できた。この条件下において、皮質領域および脳梁においてクプリゾン投与群ではifitm3の優位な発現上昇が認められた。次にクプリゾン投与によるifitm3の継時的な発現変化を検討したところ、クプリゾン投与初期においてifitm3の発現上昇が認められ、一方クプリゾン投与終了後においてはifitm3の発現は対照群と同等まで減少した。以上よりifitm3は脱髄反応に先立つ炎症反応により発現誘導されることが明らかになった。また、炎症反応の収束と共に発現量の減少が認められ、脳内炎症反応を示すマーカーの役割を果たしている可能性が考えられた。Ifitm3の発現変化と脱髄の関与を明らかにするために、GFAPプロモーター制御下にifitm3を発現するアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を作製した。作製したAAVをマウス脳内に注入し、アストロサイト特異的に発現していることを確認した。Ifitm3の発現が脱髄反応に与える影響を確認する準備が整った。
2: おおむね順調に進展している
クプリゾン投与群におけるifitm3の発現上昇が再現よく確認でき、さらに脱髄反応に先立ちifitm3の発現レベルが上昇するなどifitm3の発現量の継時的変化についての新たな知見が得られた。AAVを利用したin vivo実験の準備も整いつつある。以上より概ね順調に進展しているとした。
Ifitm3の関与をさらに検討するため、AAVやKOマウスを用いた研究を進める。また、末梢血をサンプリングし、末梢と中枢の発現レベルの相関を調べる。同時により詳細な解析を行うための培養細胞を用いた実験系の確立も進める予定である。
コロナ禍の影響による実験および学会の制限のため当初予定していた消耗品および旅費の使用を縮小したことにより次年度使用額が生じた。次年度は培養細胞を用いた実験を計画しており、培養に必要な消耗品・備品を計上する。
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Pharmacol Res.
巻: 173 ページ: 105832-105844
10.1016/j.phrs.2021.105832.