研究実績の概要 |
先天性筋疾患の一種である管状凝集体ミオパチーは、小胞体由来の膜凝集体(管状凝集体)の形成に特徴づけられる。しかし、他の先天性筋疾患同様、凝集体形成によって筋疾患が発症する仕組みは分かっていない。本研究では、ホスホイノシチドホスファターゼであるINPP5Kの酵素活性喪失が、管状凝集体の形成を引き起こすことを明らかにした。細胞免疫染色の結果、この構造体は小胞体膜上カルシウムチャンネル分子であるSTIM1やSERCA1陽性であった。また、小胞体からゴルジ体に向かうことができない変性タンパク質であるSERPIN A1のZ変異体もこの構造体の内部に集積していたことから、この凝集体は小胞体膜タンパク質および新生された変性タンパク質が含むことが明らかとなった。従って、この構造体は変成タンパク質を小胞体から分離して、細胞への毒性を軽減するために形成されたものであることが示唆される。また、管状凝集体の集積は多くの異常タンパク質が集積していることを意味しており、この変性タンパク質の集積が筋萎縮および先天性筋疾患の原因になる可能性を示唆している。INPP5Kはホスファチジルイノシトール4,5-2リン酸[PI(4,5)P2]からホスファチジルイノシトール-4-1リン酸[PI(4)P]であるが、PI(4)Pは管状凝集体膜に集積していた。しかし、PI(4)Pの管状凝集体形成における意味は明らかではない。これは今後の明らかにすべき課題である。 以上の結果は変性タンパク質の分解機構・それに伴う筋疾患発症機構の新しい可能性を示すものである。
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