研究課題/領域番号 |
19K07369
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
村田 等 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (90579096)
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研究分担者 |
阪口 政清 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (70379840)
浅沼 幹人 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00273970)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | SARM1 / 軸索変性 / パーキンソン病 |
研究実績の概要 |
SARM1によるミトコンドリア呼吸阻害が神経細胞の軸索変性や細胞死を誘導するメカニズムの解析を行った。はじめに健常者と家族性パーキンソン病(PARK2)患者由来のiPS細胞から分化誘導を行った神経細胞の比較を行った。PARK2患者由来神経細胞はストレスに対して脆弱で、SARM1のリン酸化、軸索成分の分解、細胞死の割合が健常者由来神経細胞よりも高かった。SARM1のリン酸化酵素であるJNKの阻害剤を添加すると、ミトコンドリア複合体I阻害剤ロテノンによって誘導されるSARM1のリン酸化、軸索成分の分解、細胞死は抑制された。SARM1をノックアウトした神経細胞でも同様の結果が得られた。一方、野生型SARM1を過剰発現させた神経細胞ではロテノンによって誘導される軸索成分の分解、細胞死は亢進し、リン酸化部位セリン548番をアラニンに置換したSARM1変異体を過剰発現させた神経細胞ではロテノンによって誘導される軸索成分の分解、細胞死は抑制された。SARM1は補酵素NAD+を代謝し、cADPRの増加を介して細胞内カルシウム濃度を増加させ、軸索分解や細胞死に関与すると考えられる。細胞内カルシウム濃度を減少させるためにキレート剤であるEGTAを、またカルシウムによって活性化され軸索分解に関与するカルパインを阻害ずるためにカルパイン阻害剤を添加して検討を行った。EGTAおよびカルパイン阻害剤はロテノンによって誘導される細胞死は抑制できなかったが、軸索成分の分解は抑制した。 以上のようにSARM1を介した軸索変性や細胞死誘導メカニズムが徐々に明らかとなってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SARM1による軸索変性や細胞死誘導メカニズムが徐々に明らかとなってきているので、研究はおおむね順調に進展している。また来年度以降の研究に向けて、Parkinを欠失させた神経幹細胞の準備やロテノンを用いたパーキンソン病モデルマウスの検討も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
Parkinを欠失させた神経幹細胞から神経細胞を分化誘導し、ロテノンなどのストレスに対する応答性の変化を解析する。Parkinによって誘導されるマイトファジーが軸索変性や細胞死に及ぼす影響を解明する。 ロテノンを用いたパーキンソン病モデルマウスの解析を進め、SARM1の活性化を介した軸索変性やドパミン神経の脱落が生じているかどうかを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験の実施について当初の見積額よりも安価に実施することができたが、次年度の動物実験に費用を要することが判明しているため、当該費用へ支出する予定である。
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