研究課題/領域番号 |
19K07370
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
坂本 修士 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 准教授 (80397546)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | RNA結合タンパク質 / 骨格筋 / 筋未成熟 / 細胞融合 / 細胞融合促進因子 |
研究実績の概要 |
試験管内で、二本鎖RNA結合タンパク質であるNF90-NF45は、microRNAの生合成、mRNAの安定性、RNA編集、転写に関与することが知られている。一方で、個体レベルにおけるNF90-NF45の機能については不明な点が多い。我々はこれまでに、マウス個体レベルにおいて、NF90-NF45の過剰発現は骨格筋の萎縮を引き起こすことを見出している。加えて、骨格筋における筋分化・成熟化マーカーの発現解析により、成体のNF90-NF45過剰発現マウス(NF90-NF45 dbTg mice)の骨格筋は「細胞融合」能を有する筋芽細胞の状態で停止した未成熟な状態にある可能性が示唆された。そこで、個体レベルにおけるNF90-NF45の機能解明の一端として、NF90-NF45 dbTg miceの骨格筋未成熟化の分子メカニズムの解明を試みている。 筋成熟化過程において、筋芽細胞は「細胞融合」を繰り返し、その後、成熟化する。骨格筋の「細胞融合」のマスター因子としてはMyomaker/Myomixerが知られている。Myomaker/Myomixerは、筋芽細胞の細胞融合に必須であると共に、筋細胞の成熟過程ではこれらの因子の発現は低下する。従って、成体の野生型マウスの成熟化した骨格筋ではこれらの因子の発現は確認されない。一方で、新生仔マウスの未成熟な骨格筋では、Myomaker/Myomixerの発現は高い。興味深いことに、成体のNF90-NF45 dbTg miceの骨格筋では、RNAレベルでMyomaker/Myomixerの発現が新生仔期の野生型マウスと同程度、確認される。さらに、野生型マウスの骨格筋におけるNF90-NF45の発現も、成体期ではほぼ確認されず、新生仔期では高い発現を示す。これらの知見より、NF90-NF45 dbTg miceの骨格筋の未成熟化は、NF90-NF45の高発現によるMyomaker/Myomixerの発現亢進に起因するのではないかと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、NF90-NF45 dbTg miceの骨格筋における未成熟化の分子メカニズムの解明を、microRNAや長鎖非翻訳RNA(lncRNA)等の「非翻訳RNA」に着目し、解析を進めることを目指している。そして最終的には、NF90-NF45が関与する病態生理現象(本課題においては「骨格筋の未成熟化」)の分子メカニズムを、miRNA-lncRNA-mRNAのクロストークも含めて明らかにすることにある。そのためには、先ず、NF90-NF45 dbTg miceの骨格筋においてNF90-NF45が結合しているRNA種を網羅的に同定する必要があるが、そのアプローチに取り組めていないため、自己評価の区分としては(3)を選択した。 一方で、今年度の研究成果により、NF90-NF45 dbTg miceの骨格筋の未成熟化に、筋芽細胞の細胞融合のマスター因子であるMyomaker/Myomixerの恒常的な発現が関与している可能性が考えられた。そのため、NF90-NF45 dbTg miceの骨格筋における未成熟化の分子メカニズムとして、スタートが「NF90-NF45」で、ゴールが「Myomaker/Myomixer」であることに定まったことは大きな進展である。2020年度から2021年度にかけて、「NF90-NF45」と「Myomaker/Myomixer」の間を繋ぐ分子機構を「miRNA-lncRNA-mRNAのクロストーク」に着目しながら解析を進める。
|
今後の研究の推進方策 |
NF90-NF45 dbTg miceの骨格筋においてNF90-NF45が結合するRNA種を網羅的に解析するために、先ずは、当該miceの骨格筋より初代培養筋細胞を単離、培養し、細胞祖抽出液を調整する。次に、当該抽出液を用いて、NF90抗体によるRNA免疫沈降(RIP)を行う。得られたRNAからcDNAライブラリーを作製し、次世代シークエンスでRIPにより単離してきたRNAを同定する。同様の処理を野生型マウスを用いて行い、NF90-NF45 dbTg miceの骨格筋においてNF90-NF45が特異的に結合するRNA群を絞り込む。
|