研究課題
これまでに引き続き、マウス組織由来サンプルで、エピゲノム解析、遺伝子発現解析を行なった。特に昨年度発表した報告を発展させるため、ゲノム中に多数存在するエンハンサー領域から遺伝子を直接制御するエンハンサーの選択や、さらに生体内の極少数の細胞からのヒストン修飾の解析が重要となった。これまでは、ChIP-seq法によってH3K27acの分布を解析してエンハンサー領域を推定していたが、さらに遺伝子発現に密接に関わるエンハンサー領域を選定するために、Hi-C法によるクロマチン高次構造の高解像度化を試みた。通常のHi-C法では解像度が100 kb程度とエンハンサーと遺伝子間の相互作用を解析するのは困難であるが、キャプチャープローブを用いることで、Hi-Cライブラリーの濃縮を行なった。このキャプチャープローブは単球分化に関わる転写因子Klf4遺伝子を中心に3 MBに及ぶ領域で設計した。その結果、2 kbという非常に高い解像度でのクロマチン高次構造解析が可能となった。一方、組織内には一匹あたり数百個しか存在しない細胞群が存在する。このような極少数の細胞におけるヒストン修飾分布を評価するために、ゲノムワイドでのヒストン修飾を解析する新しい技術であるCUT&Tag法を導入した。その結果、H3K27me3やH3K4me3などについて数千個の細胞を用いるのみで、ゲノムワイドでのヒストン修飾の解析が可能となった。本研究課題での目的であったシングルセルレベルでのエピゲノム解析手法の確立は達成できなかったが、マウス生体由来からの微量サンプルでの遺伝子発現解析(mRNAと全RNAの双方の完全長解析)、ヒストン修飾やオープンクロマチン解析、高解像クロマチン高次構造解析の技術的基盤を確立することができた。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Nature Communications
巻: 12 ページ: 4379
10.1038/s41467-021-24609-4
臨床免疫・アレルギー科
巻: 76 ページ: 549-554