我々はこれまでに、RNA結合タンパク質Mex-3Bの欠損マウスで寿命が延長し、インスリン感受性が亢進していることを見出している。さらに、Mex-3B欠損マウスの腸内細菌叢が野生型マウスと異なっており、その違いがインスリン感受性の亢進に影響を与えていることを明らかにした。本研究課題では、①インスリン感受性に影響を与える細菌の同定および②Mex-3Bによる腸内細菌叢の制御機構の解明を目的として解析を進めてきた。①に関しては、Mex-3B欠損マウスと野生型マウス間で存在比に大きな差があったClostridiumなどの菌を単離することはできなかった。そこで東京工業大学伊藤武彦教授との共同研究により、ホールメタゲノムシーケンスを用いたin silicoでの菌の同定を試みた。その結果、新規の細菌を複数同定することができた。②に関しては、Mex-3Bマウスと野生型マウスの腸上皮内免疫細胞を回収し、single cell RNA-seqを行った。その結果、Mex-3Bの欠損により複数の細胞群の存在比が変化していることが明らかになった。特にCD8陽性T細胞アイソフォーム群の割合がMex-3Bの欠損により大きく変化していたことから、Mex-3Bこれらの細胞群の割合を制御することで腸内細菌叢の制御を行っている可能性が考えられる。
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