研究課題/領域番号 |
19K07385
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
村田 陽二 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (60400735)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自然免疫系細胞 / マクロファージ / がん免疫監視 / 免疫チェックポイント |
研究実績の概要 |
本研究課題では、がん細胞と自然免疫系細胞(マクロファージおよび樹状細胞)間での細胞間コミュニケーションを直接担う膜型分子であるSIRPαと同じく膜型分子CD47により形成される細胞間シグナルCD47-SIRPα系ならびにSIRPαのファミリー分子である膜型分子SIRPβに着目し、培養細胞、遺伝子組換えマウスなどを用いた解析から、自然免疫系細胞からのがん細胞の免疫監視回避機構の解明を目指しており、本年度は、以下の研究成果を得た。 1)マクロファージに関する解析:これまでに、研究代表者はSIRPαがマクロファージによるがん細胞の貪食を抑制的に制御することを見出していた。そこで、SIRPαが貪食制御以外のマクロファージのがん細胞に対する免疫監視回避に関与するかについてSIRPα機能阻害剤(他のSIRPαファミリー分子にも作用する可能性が高い)を用いた検討を進め、がん細胞の排除に関わるマクロファージからのNOおよびTNFαの産生の制御を抑制的に制御している可能性を見出した。また、SIRPαに対する新たな阻害剤(従来の阻害剤よりも特異性が高い)の作出を行い、得られた薬剤が、マクロファージのがん細胞の貪食制御を促進する結果を得るに至り、よりSIRPa特異的な作用を示す阻害剤を用いた解析を進めるに至った。 2)SIRPβのがん免疫監視への関与の検討:SIRPβおよびSIRPαの機能を制御する薬剤とマウス骨髄由来マクロファージ、マウス由来がん細胞を用いたin vitroの解析から、SIRPβがマクロファージによるがん細胞に対する細胞傷害活性の惹起に関与する可能性を示唆する実験結果を得た。また、SIRPβおよびSIRPαの機能を制御する薬剤と腫瘍排除に重要なサイトカインであるIFNγとが相乗的に作用し、がん細胞に対するマクロファージの細胞傷害活性を高めることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、マウス骨髄由来マクロファージ、マウス由来がん細胞、SIRPαおよびSIRPβの機能制御剤を用いたin vitroの解析から、マクロファージに発現するSIRPαとSIRPβががん免疫監視の制御に関与するか否か、また、その役割についての解析が順調に進みつつある。これらのことから、本研究課題は、概ね順調に進みつつあると考えられたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた研究成果をもとに、培養細胞のみならず腫瘍モデルマウスおよびSIRPα遺伝子破壊マウスを用い、自然免疫系細胞によるがん細胞の免疫監視とその回避機構にSIRPα、SIRPβが如何に関与するか、また、その制御機構についての解析を進める。
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