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2019 年度 実施状況報告書

マスト細胞と好酸球除去による新規喘息治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K07388
研究機関東北医科薬科大学

研究代表者

森口 尚  東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (10447253)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードマスト細胞 / ヒスタミン / ヒスチジン脱炭酸酵素 / トランスジェニックマウス
研究実績の概要

気管支喘息では、マスト細胞がヒスタミンを産生によりアレルギーを惹起し病態を形成する。GATA1およびGATA2はマスト細胞の分化・維持において重要な機能を担う転写因子である。ヒスタミン産生過程でヒスチジン脱炭酸酵素は必須の酵素であり、ヒスタミン産生細胞特異的に発現するマーカー分子でもある。公共データベースの探索からヒスチジン脱炭酸酵素遺伝子はマスト細胞においてGATA2の標的遺伝子であることがわかった。そしてGATA2欠損マスト細胞の解析から、ヒスチジン脱炭酸酵素がGATA2の制御下にあることを見出した。そこで、ヒスチジン脱炭酸酵素遺伝子を含む大腸菌人工染色体(BAC)を用いて、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を挿入したDNA構築を作成し、ヒスタミン産生細胞モニターマウスを樹立した。本ヒスタミン産生細胞モニターマウスでは、マスト細胞や好塩基球などの代表的なヒスタミン産生細胞でGFPレポーターの蛍光発現が確認された。また急性炎症誘導時にGFPレポーター発現が好中球に誘導されることを明らかにした。また、マスト細胞のゲノムDNA上でのGATA2の結合部位が、炎症誘導によりどのように変化するかを明らかにするために、独自にクロマチン免疫沈降シーケンス解析の準備を進めた。マウス細胞株であるBRC6細胞を用いた条件検討では、GATA2のゲノムDNA上での結合部位を特異的に検出できる反応条件を見出しており、今後、次世代シーケンサー解析に進める。GATA1およびGATA2を標的としたアレルギー治療の可能性を開拓するために、それぞれのmRNAを阻害する候補分子の探索も進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、BACトランスジェニックマウスを用いた、ヒスタミン産生細胞のモニターリング系が確立され、その結果を中心に、原著論文一報をScientific Reports誌に報告した。本マウスは、これまで明らかでなかったヒスタミン産生細胞の同定や、炎症アレルギー病態の評価系として有用なツールとなると考えている。また、GATA2欠損マスト細胞を用いた、独自のトランスクリプトーム解析データが得られてきており、バイオインフォマティクス解析を進めている。クロマチン免疫沈降シーケンス解析に関しては、初期の条件検討とサンプル調整が完了し、次世代シーケンサー解析をすすめる段階にある。また、GATA1とGATA2に対する阻害剤としての、小核酸分子の候補も得られており、本研究に関しておおむね順調に進展していると考えている。また、骨髄球系血液細胞で産生されるヒスタミンに関する最近の知見をまとめた総説論文をGenes to cells誌に報告した。

今後の研究の推進方策

急性炎症誘導時に末梢血中の好中球でヒスタミン産生がおこることを明らかにした。その後の解析から、好中球の中でもヒスタミン産生する細胞としない細胞が存在することがわかった。活発にヒスタミンを産生する好中球(Hdc+)はその他の向炎症性サイトカイン群の産生も活発であるが、ヒスタミンを産生しない好中球(Hdc-)ではサイトカイン産生も抑制されている。今後、この性質の異なる2つの細胞集団の生体内での機能の違いを明らかにすることで、アレルギー炎症の病態解明につながると考えている。次年度以降、GATA2欠損マウスにヒスタミン産生細胞モニターマウスを交配し、レポーター発現の組織分布と強度にどのような変化が現れるか検討する。また、GATA2欠損マウスの気管支喘息に対する感受性を解析する際に、GFPレポーター発現変化を指標に、病勢を評価する。

次年度使用額が生じた理由

今年度、トランスクリプトーム解析とクロマチン免疫沈降解析の予備実験が比較的順調に進み、試薬類等の費用を低く抑えることができた。また、核酸小分子の探索では候補分子が短期間のうちに同定できたため、費用は予定より低くなった。次年度以降、次世代シーケンス解析が予定されており、それに当てるものとする。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] University of Michigan(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of Michigan
  • [雑誌論文] Histamine and histidine decarboxylase: Immunomodulatory functions and regulatory mechanisms2020

    • 著者名/発表者名
      Moriguchi Takashi、Takai Jun
    • 雑誌名

      Genes to Cells

      巻: 25 ページ: 443~449

    • DOI

      10.1111/gtc.12774

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 敗血症性肺障害時の肺に集積するヒスタミン産生能を持つ好中球の役割2020

    • 著者名/発表者名
      森口 尚、高井 淳
    • 雑誌名

      生化学

      巻: 92 ページ: 268-271

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 原発性免疫不全症とヒトGATA2遺伝子変異2020

    • 著者名/発表者名
      高井 淳、森口 尚
    • 雑誌名

      Bio Clinica

      巻: 35 ページ: 69-72

  • [雑誌論文] Lipopolysaccharide-induced expansion of histidine decarboxylase-expressing Ly6G+ myeloid cells identified by exploiting histidine decarboxylase BAC-GFP transgenic mice2019

    • 著者名/発表者名
      Takai Jun、Ohtsu Hiroshi、Sato Atsushi、Uemura Satoshi、Fujimura Tsutomu、Yamamoto Masayuki、Moriguchi Takashi
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 9 ページ: -

    • DOI

      https://doi.org/10.1038/s41598-019-51716-6

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Spiral ganglion cell degeneration‐induced deafness as a consequence of reduced GATA factor activity2019

    • 著者名/発表者名
      Hoshino Tomofumi、Terunuma Tsumoru、Takai Jun、Uemura Satoshi、Nakamura Yasuhiro、Hamada Michito、Takahashi Satoru、Yamamoto Masayuki、Engel James Douglas、Moriguchi Takashi
    • 雑誌名

      Genes to Cells

      巻: 24 ページ: 534~545

    • DOI

      https://doi.org/10.1111/gtc.12705

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 転写因子GATA2と免疫不全症2019

    • 著者名/発表者名
      高井 淳、森口 尚
    • 雑誌名

      Precision Medicine

      巻: 2 ページ: 38-41

  • [学会発表] GATA2によるサイトカイン産生亢進を介した炎症促進メカニズム2019

    • 著者名/発表者名
      森口尚
    • 学会等名
      新学術領域 予防を科学する炎症細胞社会学 班会議.
    • 招待講演
  • [学会発表] 2.ヒスタミン合成酵素レポーターマウスの樹立とリポ多糖刺激に応答して増加するヒスタミン合成酵素陽性好中球の同定.2019

    • 著者名/発表者名
      高井淳、島田昴志、大津浩、山本雅之、上村聡志、森口尚
    • 学会等名
      日本生化学会東北支部第85回例会.
  • [学会発表] GATA2へテロ欠損マウスの炎症モニターリング2019

    • 著者名/発表者名
      島田昂志、高井淳、上村聡志、山本雅之、森口尚
    • 学会等名
      日本生化学会東北支部第85回例会
  • [学会発表] 副腎髄質交感神経系でのGATA2機能解析2019

    • 著者名/発表者名
      浅香智美,河合佳子,森口尚
    • 学会等名
      第92回日本生化学会大会
  • [学会発表] GATA2 provokes inflammation and infectous immunity via direct regulation of inflammatory cytokine genes2019

    • 著者名/発表者名
      高井淳、島田昴志、大津浩、山本雅之、上村聡志、森口尚
    • 学会等名
      第92回日本生化学会大会
  • [学会発表] リンパ節切除後の再疎通現象におけるGata2遺伝子の及ぼす影響について2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木 紅音、浅香 智美、林 もゆる、高井 淳、上村 聡志、森口 尚、河合 佳子
    • 学会等名
      第51回 東北生理談話会
  • [備考] 東北医科薬科大学医学部医化学教室

    • URL

      https://www.dmbc-tmpu.com/

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公開日: 2021-01-27  

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