研究課題
当初の研究課題として解析を進めていたTetraspanin18ノックアウトマウスは、新生仔マウスの網膜血管において顕著な血管新生異常を呈し、これまでその分子機序の解明に取り組んできた。Tspan18がVEGFR2のshedding断片である75kDa断片に直接結合することを見出し、様々なin vitroの解析より、Tspan18はsheddingによる75kDa断片の生成過程に何らかの役割を持つことを示唆する結果を得たものの、血管内皮細胞特異的にTspan18をノックアウトしたマウスの網膜を用いて血管新生が開始する生後2日目より継時的にshedding断片の量を調べたところ、Tspan18の有無による75kDa断片の量に差異は認められず、Tspan18ノックアウトによる網膜血管新生の遅延と動脈形成異常を説明するに至らなかった。本研究課題の遂行と同時期に、血管新生期特異的に発現する分子をいくつか見出し、そのうちの1つであるFolliculin(FLCN)について解析を行ってきた。FLCNを血管内皮特異的にノックアウトすると血管とリンパ管がところどころで接続して致死となり、この表現型は出生後のFlcn遺伝子欠失、つまり血管とリンパ管が完全に分離した出生後にFlcnを欠失させた場合でも、同様であった。そのメカニズムとして、Flcnはリンパ管発生のマスター転写因子であるProx1の発現量を負に制御していること、また、血管内皮細胞でFlcnが欠失すると Prox1が発現しリンパ管に類似した『リンパ管もどき静脈内皮細胞』となり、リンパ管を接続すべき対象と認識してしまうことを見出した。また、Flcnによって核内移行が抑制される転写因子TFE3はProx1の制御領域に結合し、Prox1の発現を直接制御していることを見出した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件)
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