研究課題/領域番号 |
19K07392
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 政秋 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (90463801)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バイオマーカー / 顕微鏡的多発血管炎 |
研究実績の概要 |
活動期の顕微鏡的多発血管炎(MPA)の血清で特異的に増加する、アポリポ蛋白A-IのC末端13アミノ酸残基からなるペプチド(AC13)の質量分析及びELISAによる定量系を構築し、MPAを近縁疾患から鑑別するバイオマーカーとして確立することを目的とする。 【質量分析による血清AC13濃度の測定系の確立】 前年度に構築した測定系について、1)血清に添加する内部標準ペプチドである安定同位体標識AC13(SIL-AC13)濃度の最適化、2)MALDIターゲットプレートの選定、3)マトリックス溶液組成の最適化を行い、C18磁気ビーズ抽出した血清AC13の質量分析におけるイオン化効率の向上を図った。AC13及びSIL-AC13を健常血清に各々0-20μM及び5μMで添加し、C18磁気ビーズ抽出したペプチドの質量スペクトル測定を行ったところ、AC13の測定下限は旧条件の1.25μMから0.625μMに向上し、AC13イオン強度/SIL-AC13イオン強度比にも高い直線性が認められた(R2=0.9975)。これと並行して血清収集を行い、MPA、対照疾患および健常の血清を計183例収集した。最適化した測定系を用いて、収集血清のAC13濃度を定量した。計算したAC13濃度には、CRPとの間に強い正の相関が認められた(r=0.730, p<0.0001)。 【ELISA定量による血清AC13濃度の測定系の確立】 前年度に得られた、AC13のN末端を認識する抗体を産生するハイブリドーマのミックスクローンの限界希釈を行い、単一クローンを得た。当該クローン1×10^7 cells/mLをマウス(BALB/cCrslc, 雌, 6匹)の腹腔内に1 mL/bodyで投与し、最終的に32 mLの腹水を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【質量分析による血清AC13濃度の測定系の確立】 本年度は、1年目に構築した質量分析系の改善及び血清の収集を行い、血清中のAC13濃度を定量する計画だった。内部標準として用いるSIL-AC13の濃度や、使用するMALDIターゲットプレート、質量分析時のマトリックス溶液組成等を吟味したことで、安定したAC13濃度定量が可能となった。最適化した本測定系を用いた患者及び健常血清のAC13濃度定量まで到達しており、現在、さらなる血清収集及び得られたデータの解釈を行っている。血清収集が順調に進んでおり、測定したAC13濃度の考察にも着手できている。よって、本項目については予定通り進行している。 【ELISA定量による血清AC13濃度の測定系の確立】 本年度は、抗AC13抗体産生ハイブリドーマをクローニング後、培養上清より得られた当該抗体を用いて競合ELISA系を構築し、収集した血清におけるAC13濃度を測定する計画だった。だが、測定を行うにあたり、抗AC13抗体を大量かつ高濃度で得る必要があると考え、ハイブリドーマ培養ではなくハイブリドーマ接種マウスからの腹水採取に変更した。当初予定した競合ELISAは行えなかったが、腹水採取の結果、抗AC13抗体を大量に獲得できた。また、測定のための基本的なELISA系は確立しており、血清AC13濃度の測定に取り掛かれる状況にある。よって、本項目は予定よりは遅れているが、内容としては十分に進行している。
以上より、本研究は全体としておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
【質量分析による血清AC13濃度の測定】 引き続き、活動期・非活動期のMPA血清や対照疾患の血清を収集し、構築した質量分析系で血清AC13濃度を定量する。得られた濃度値を評価し、AC13の活動期MPAのバイオマーカーとしての可能性を検証する。
【ELISA定量による血清AC13濃度の測定】 得られた腹水から抗AC13抗体を精製し、競合阻害の程度により定量する競合ELISAの系を構築する。収集した血清におけるAC13濃度を定量し、質量分析で得られた結果と比較して、定量性や簡便性などについて評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ELISA定量による血清AC13濃度の測定系において、ハイブリドーマのマウス腹腔内投与による腹水の採取を外部委託していたが、成果物の納品が年度末となり、費用の支払いが次年度に持ち越されてしまった。また、競合ELISAを行えなかったため、測定にかかる費用が当初予定よりも少なくなった。これらの事柄が、次年度使用額が生じた主な理由である。生じた次年度使用額は、外部委託費用の支払いや、競合ELISA系で使用する試薬等の購入費用に充てる計画である。
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