研究課題
研究代表者は、子宮内膜がん患者データを用い、子宮内膜がんの悪性化と核膜孔複合体(NPC)因子のかかわりを検証した。その結果、NPC因子の一つが過剰発現している子宮内膜がん患者の生存率が著しく低下していることを見出した。さらに、NPC因子の発現とタイプ2子宮内膜がん患者において発現が低下している遺伝子群の発現に負の相関があり、NPC因子が子宮内膜がんの悪性化に関わることが示唆された。そこで、研究代表者はNPC因子が子宮内膜がんの悪性化に何らかの役割を果たしていると仮説を立てた。ゆえに本研究は、NPC因子が関わる子宮内膜がん悪性化メカニズムを解明することを目的としている。NPC因子を含む悪性化シグナル経路とターゲット分子を同定し、さらにマウスを用いて悪性化メカニズムを検証することをこの研究の大きな柱としており、今年度は悪性化シグナル経路を同定するため、まずNPC因子の発現量が異なる細胞株の作製を行った。作製に成功したNPC因子の発現レベルが異なるこれらの細胞株を用い、自己複製能、未分化性の解析を行ったところ、予想通り、NPC因子の発現レベルと自己複製能、未分化性に相関があることが明らかとなった。さらに、NPC因子の発現レベルは、代謝にも影響を与えているという想定外の新たな知見を得、現在、機能解析を進めている。また、ターゲット分子特定のために、免疫沈降物のLC-MS解析を行い、相互作用分子を何種類か見出した。現在は、これらターゲット候補分子が、機能的にどのように子宮内膜がんの悪性化に関わっているのかについて精力的に解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
核膜孔複合体(NPC)因子の発現レベルが子宮内膜がんの進展に何らかの影響を与えているという仮定に基づき立てた研究計画に対し、予想通りの結果を得ることができ、またさらに新たな知見を得て、研究内容が深まった。しかしながら、今年度は一年目だったのもあり、研究内容を学会にて発表するに至らなかったため、現在までに当研究はおおむね順調に進展していると考えた。
今後は、研究計画通り進める予定である。新たに得られた代謝に関する知見に関し、様々な代謝機能解析実験も必要に応じて適宜加え、子宮内膜がんにどのように関わっているのかを明らかにしていく。また、特に力を入れたいのは、悪性化シグナル経路に位置すると考えられるターゲット候補分子群に関し、細胞内局在の解析や、NPC因子との一分子相互作用リアルタイム解析を行うことである。これにより、スムーズに3年目のマウスを用いた悪性化メカニズムの検証へとつなげて行きたい。
今年度大学内のグラント獲得により予想以上に研究費が潤沢となり、さらに研究も順調に進んだため、次年度使用額が生じた。しかしながら、新たな知見が得られたため別の解析を次年度に進めて行かねばならず、当初予定していなかった試薬や消耗品にこの使用額を充てて行く予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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