研究課題/領域番号 |
19K07400
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高橋 晴美 神戸大学, 医学研究科, 特命准教授 (50546489)
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研究分担者 |
柴崎 忠雄 神戸大学, 医学研究科, 客員准教授 (00323436)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵島 / 膵β細胞 / Epac2 / cAMP |
研究実績の概要 |
膵β細胞からのインスリン分泌は生体の糖恒常性維持において重要であり、グルコースやホルモン、神経入力などの種々のシグナルによって制御されている。一方、膵島の三次元構造の維持も正常なインスリン分泌制御に重要であることが知られている。本研究では、これまで不明であった膵β細胞のEpac2/Rap1シグナルによる細胞接着制御に焦点を当て、偽膵島をモデルとして膵島の三次元構造形成・維持機構におけるEpac2/Rap1シグナルの役割を明らかにすることを目的とする。今年度は以下の研究を行った。 前年度に引き続き、本研究の前に既に作製していた一部のEpac2アイソフォームを欠損する膵β細胞株(pKO細胞)と前年度に作製したすべてのEpac2アイソフォームを欠損する膵β細胞株(cKO細胞)とで、インスリン分泌能、偽膵島形成能、および下流因子Rap1の活性化を比較した。偽膵島形成において、cKO細胞はpKO細胞に比して偽膵島を形成しにくく、また形成された細胞凝集塊が不正な形状を示すことが再現された。また、pKO細胞ではcAMPによるRap1の活性化が認められるが、cKOでは活性化が認められなかった。これらの結果は、今後実施予定のEpac2/Rap1の下流因子の同定においてアイソフォーム特異的な下流因子探索の基盤となる。また、今年度は、細胞接着におけるEpac2シグナルの役割を明らかにするために、未刺激およびcAMP刺激時の細胞接着因子の局在を免疫染色および細胞分画により検討した。cKO細胞では未刺激時の細胞接着因子の局在が野生型の親株やpKO細胞と異なることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
1)偽膵島形成におけるEpac2/Rap1シグナルの役割の解明:引き続き初年度に作製したEpac2ノックアウト細胞を用いて偽膵島形成能の詳細な評価を行う。その際、cAMPやインクレチンなどのcAMPシグナルを活性化する薬剤を添加し偽膵島の形成や機能に対する効果がEpac2欠損により変化するかどうかを検討する。また、何種類かの細胞外基質の存在下で偽膵島を作製し、細胞外基質の種類によって偽膵島形成能や機能の変化の有無およびEpac2欠損による影響を検討する。Epac2ノックアウト細胞に各Epac2アイソフォームを遺伝子導入により発現させて偽膵島形成能を検討し、偽膵島形成における各アイソフォームの役割を明らかにする。 2)膵β細胞で細胞接着または細胞間相互作用に関与するEpac2/Rap1の下流因子の同定およびその機能解析:前年度に作製したEpac2欠損膵β細胞(cKO細胞)を用いて、アフィニティ精製などを利用したプルダウン法によりRap1とRap1結合タンパクの複合体を精製し、質量分析によりRap1結合タンパクを同定する。同定した候補タンパク質の機能解析を行い、膵β細胞の細胞接着または細胞間相互作用に関与するEpac2/Rap1の下流因子を同定する。また、細胞接着におけるEpac2シグナルの役割を引き続き免疫染色や細胞分画などにより検討する。さらに、糖尿病モデル動物の膵島におけるEpac2アイソフォームの発現を比較し、Epac2を介する細胞接着の病態生理学的役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験用消耗品が当初の予定より少額であり、軽微であるが残額が生じた。残額は次年度の消耗品購入に使用する。
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