研究課題/領域番号 |
19K07401
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
勅使川原 匡 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (40403737)
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研究分担者 |
西堀 正洋 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (50135943)
和氣 秀徳 近畿大学, 医学部, 講師 (60570520)
王 登莉 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (40815693)
劉 克約 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 非常勤研究員 (40432637) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高ヒスチジン糖タンパク / HRG / 妊娠 / 胎盤 / 妊娠高血圧症候群 / 炎症 / 血圧 / HMGB1 |
研究実績の概要 |
高ヒスチジン糖タンパク(histidine-rich glycoprotein, HRG)は、肝で産生される分子量75kDaの血漿糖タンパクであり、主に自然免疫系の血管病態に対して抗炎症的役割を果たす。また、血漿HRGは、ヒト妊娠期に減少することが古くから報告されている。近年、ヒト妊娠期において、血漿HRGの過剰な減少が妊娠高血圧症候群の進展リスクと相関することが報告された。しかし、妊娠期高血圧における血漿HRGの関与や健常妊娠期の血漿HRGの減少は、ヒト妊婦に対する臨床研究ばかりで、基礎研究に基づいた報告がほとんどない。本研究では、健常妊娠期における血漿HRG減少のメカニズムを明らかとすることを目的とし、健常BL6マウスの血漿HRGの変動について解析した。マウスの血漿HRGは、分子量が約7kDa異なる2本のバンドとして存在していた。健常BL6マウスの妊娠期において、HRGはヒト妊婦と同様に減少し、特に低分子HRGよりも高分子HRGが著しく減少していた。また、妊娠期のHRGタンパクの減少は、出産後に回復した。一方、妊娠期間を通して、肝HRG遺伝子の発現量は、変化がなかった。これらの結果から、妊娠期の高分子HRGは、タンパクレベルでの代謝回転が亢進していると考えられた。実際、未妊娠マウスに比べて、妊娠マウスのHRGタンパクのクリアランスは非常に早く、生物学的半減期は1/2に減少していた。この妊娠期HRGの減少は、血中プロテアーゼなどの液性因子ではなく、子宮組織(おそらくは胎盤)に存在するマトリックスメタロプロテアーゼに依存していた。本研究において、妊娠期の血漿HRGタンパクの減少メカニズムが明らかとなった。炎症病態に対する拮抗的制御因子であるHRGが、妊娠期に何らかの生理的役割をもつ可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
妊娠HRG KOマウスの表現型解析、及び、妊娠野生型C57BL/6マウスの血漿HRGの動態について、新規データがまとまりつつある。病態制御因子であるHRGが、妊娠期の胎盤形成・維持に対して生理的役割をもつという結果は、世界的にみても先駆的発見である。妊娠高血圧症候群に対しても、HRG補充療法などの新規治療戦略の発展が考えられる。現在、論文投稿の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)論文投稿の準備。 (2)HRG処置したヒト絨毛外栄養膜細胞株(HTR8/SVneo)のin vitro 系によって、HRG刺激による栄養膜細胞の上皮型から内皮型への細胞転化(血管リモデリング機能の獲得)について解析する。同様に、HMGB1処置、または、HRGとHMGB1の同時処置によって、栄養膜細胞に対するHRGとHMGB1の拮抗的作用について解析する。
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