研究課題/領域番号 |
19K07409
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
渡辺 研 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 運動器疾患研究部, 室長 (10342966)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 変形性関節症 / モデルマウス / ゲノム解析 / フェロトーシス |
研究実績の概要 |
変形性関節症は最も罹患者の多い加齢性の運動器疾患であり、介護要因の一つである。これまでに、障害誘導性のモデルマウスやヒト集団を用いた分子遺伝学的アプローチにより、病因論につながる分子やパスウェイが提案されてきたが、手術による治療法以外にエビデンスで支持された治療法は非常に限られており、また疾患修飾薬もない。世界でも珍しい遅発性の変形性関節症自然発症マウスの遺伝素因の解析から、新たな分子の活性消失型変異を発見した。この分子の変異が軟骨変性に関わると考え、遺伝子発現と細胞を用いたin vitroの検証を行った。当該遺伝子は、加齢とともに発現が上昇したことから、老化や疾患と強い関連があるIL-1βによる変動を見たところ、顕著に発現が誘導され、変形性関節症の発症要因である加齢と炎症との接点が示唆された。in vitroで軟骨細胞に野生型ならび同定した変異型の遺伝子を発現させて、IL-1β依存的な細胞死について検討を行ったところ、ベクター導入株や野生型導入株に比べて変異型導入株はは顕著な感受性を示した。さらにこの細胞死は、フェロトーシス阻害剤であるFerrostatin-1の添加により抑制された。このことから、当該マウスモデルにおける遺伝子変異がフェロトーシス感受性が亢進していることが考えられた。また、IL-1β処理により変異型導入株に特異的かつ顕著に発現亢進する遺伝子を同定し、この分子の機能についても検討を進めるところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
in vitroでの実験は順調に進み、ほぼ今年度で終え、すでにin vivoのマウスの外科的モデルによる検証に進んでいる。また、鉄過剰餌・鉄欠乏餌を用いたマウスの実験も進めており、前倒しで、in vivoの検証へと進めている。
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今後の研究の推進方策 |
変形性関節症の外科的マウスモデルを用いて、阻害剤の効果について評価を行うとともに、フェロトーシス関与のエビデンスを免疫組織化学の手法などを用いて得ていく。また、炎症状態をモデル化するため、コンディショナルにサイトカインを発現するマウスの作出に取りかかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
検証用の抗体の購入を予定していたが、今年度の実験に間に合わないため、次年度で行うこととしたため。
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