研究課題
悪性グリオーマの組織像を示すが予後良好に推移する腫瘍に着目し、そうしたものの中にBRAF V600E変異、ATRX欠失、CDKN2A/Bの両アリル欠失という極めて稀な遺伝子異常の組み合わせを有するものがあることを見出してcircumscribed high-grade astrocytoma (C-HGA)として報告した。ATRX欠失がTERT promoterに置き換わると、epithelioid glioblastoma (E-GBM) に特徴的な遺伝子変異パターンとなる。C-HGAとE-GBMは若年者の大脳半球、特に脳表部付近に発生し、画像の初期像は両者ともに類似し、組織学的にも多少の類似性があるが、髄液播種を来して極めて予後不良なE-GBMに対してC-HGAは通常の膠芽腫と比べてもかなり予後良好であり、両者が臨床病理学的および分子遺伝学的に層別化可能な悪性グリオーマの亜型であることを明らかにした。悪性グリオーマは全身の腫瘍の中でも最も悪性度の高いものとして認識されており、治療に際しては非常に侵襲性の高いものが一般におこなわれているが、本例のような予後良好に経過する群を適切に層別化することは臨床的な意味が大きいものと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
おおむね順調であり、新たな研究シーズに対して解析を進めている。
脳腫瘍におけるinternal tandem duplication (ITD)変異の意義づけ:ITDの検出は既知の遺伝子解析技術では困難を伴うが、我々はそれを容易にする技術開発面でも成果を挙げている。このような微小な遺伝子重複がなぜ腫瘍を引き起こすのか、その機構解明を進めていく。SMARCB1変異亜型に基づくAT/RTの層別化:Atypical teratoid/rhabdoid tumor (AT/RT) はSMARCB1の両アレルの不活性化が腫瘍発生に重要であると考えられているが、これまでの解析結果からSMARCB1の変異様式には様々なものがあり、年齢、性別、発生部位、予後とも絡めた層別化解析で新知見の探索を進める。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Brain Tumor Pathol.
巻: 36 ページ: 103-111
10.1007/s10014-019-00344-z.