研究課題/領域番号 |
19K07412
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
近藤 哲夫 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (30334858)
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研究分担者 |
中澤 匡男 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10345704)
望月 邦夫 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10377583)
大石 直輝 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (90623661)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 甲状腺癌 / がん進化 / 遺伝子変異選択 |
研究実績の概要 |
我々は甲状腺癌の発癌、分化、増殖を調節する染色体・遺伝子変異、特定遺伝子群の発現変化、エピジェネティクス異常を見出し、これらの変化が甲状腺癌の組織形態と臨床病態と密接に関係することを明らかにしてきた。我々がより一層の解明をすすめたいのが遺伝子変異選択のメカニズムと分子生物学的プロファイリングに基づいた甲状腺癌の診断、リスク分類である。遺伝子変異選択とは特定の腫瘍型にみられる染色体・遺伝子異常がどのように選択され、選択によってどのような結果を生じるかという根本的な課題である。甲状腺癌の主要なドライバー変異にはRET/PTC 再構成、NTRK 再構成、BRAF 変異、RAS 変異があるが、これら遺伝子変異の選択により腫瘍細胞に乳頭癌共通の細胞・組織形態学的変化をもたらす分子機序は不明である。一方で乳頭癌と濾胞癌にはRAS 変異が共通の遺伝異常として存在するが、同じ遺伝子異常を有する濾胞上皮腫瘍が異なる核形態を示す原因についても解っていない。本研究では我々の基盤的成果をさらに発展させ、分子情報プロファイルに基づく甲状腺がん進化における遺伝子変異選択のメカニズム解明と境界病変を含めた甲状腺腫瘍の層別リスク分類の確立を行う。本研究では甲状腺がん進化における遺伝子変異選択とリスク層別化の解析を行う。研究期間中に関連する三つの課題についての解明を試みる。第一は甲状腺癌における分子情報プロファイルの臨床的有用性の証明。第二にはプログレッションに関わる甲状腺がん進化における遺伝子変異選択の解明。ここでは濾胞腺腫から濾胞癌、NIFTPから乳頭癌、分化癌から未分化癌への転化の分子メカニズムを明らかにする。第三は遺伝子-表現型/形態に基づいた甲状腺癌のリスク層別化である。本研究の成果によって甲状腺癌患者の治療選択、予後予測に実用的な甲状腺癌の組織分類、リスク分類を提唱する
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は予備実験のデータ分析、ヒト材料(甲状腺癌手術症例)の収集、病理診断の再評価、臨床情報の収集、染色体・遺伝子変異解析を行った。現時点の成果として、プログレッションに関わる甲状腺がん進化における遺伝子変異にはBRAFとTERTプロモーターのdual変異が重要であるのとの予備的データが得られた。また本邦におけるNIFTPはBRAF変異が主要な遺伝子変異であることがわかった。また甲状腺希少がんであるCASTLEではTERTプロモーター変異があることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は引き続く追加実験、分子情報プロファイル、統計学的手法を用いた新規診断分類法の提唱、リスク層別化を行う。1)甲状腺癌の分子情報プロファイリング:濾胞上皮由来腫瘍(濾胞腺腫、濾胞癌、乳頭癌、低分化癌、未分化癌、FT-UMP、NIFTP)を対象として、分子情報プロファイリングを行い、組織型、臨床経過、臨床病理学因子、予後との相関性を分析する。2)甲状腺がん進化における遺伝子変異選択(担当:濾胞腺腫/FT-UMPから濾胞癌への転化、NIFTPから乳頭癌への転化、分化癌から未分化癌への転化の3つに焦点を当て、甲状腺がん進化のキーとなる分子異常の同定を行う。3)遺伝子-表現型/形態による甲状腺癌のリスク層別化:分子情報プロファイル、甲状腺がん進化のキーとなる分子異常に基づき、遺伝子-表現型/形態による甲状腺癌の新たな腫瘍分類の策定、患者予後や転化の予測できる有用なリスク層別化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大予防により、一部実験が遅延したため、購入予定物品の購入を次年度とした。
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