研究課題/領域番号 |
19K07414
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
坂部 友彦 鳥取大学, 医学部, 助教 (50639747)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 充実型亜型 / IASLC/ATS/ERS分類 / 転写因子 / 膜タンパク |
研究実績の概要 |
多彩な組織像を示す浸潤性肺腺癌の中で充実型増殖、微小乳頭型増殖を示す腫瘍細胞を内包する患者は極めて予後不良であることが明らかになっている。本研究では、充実型肺腺癌の形成機序を明らかにし、病理学的組織亜型分類に基づいた浸潤性肺腺癌の新規治療法開発へと応用するために、本年度は以下の検討を行った。 ①充実型浸潤性肺腺癌に対する治療標的となる分子を探索するため、昨年度実施した充実型肺腺癌と腺房型肺腺癌の遺伝子発現比較によって得た充実型増殖成分に特徴的な遺伝子発現プロファイルの再解析を行った。既知の医薬品の大多数が膜タンパクを標的としていることから、発現プロファイルの中から内在性膜タンパクを抽出し、複数の公共データベースを用いたin silico解析によって充実型亜型に対する標的となりうる9種の内在性膜タンパクを同定した。今後、臨床病理学的解析を行うとともに浸潤性肺腺癌における機能解析を実施していく予定である。 ②昨年度、充実型浸潤性肺腺癌の形成メカニズムを解明するために、遺伝子発現制御に関わると推測される10種の転写因子をin silico解析によって抽出した。これらの転写因子の機能解析を実施するために、各転写因子の過剰発現レンチウイルスベクターの構築、2種類の肺腺癌細胞株 (A549、PC9)を用いた安定発現株の樹立に取り組み、現在、約半数の転写因子について安定発現株を樹立し終えた。残りの転写因子については早急に安定発現株を樹立し、今後はこれらの転写因子の発現が充実型浸潤性肺腺癌の表現型に与える影響を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度同定した10種の転写因子に加えて、充実型浸潤性肺腺癌で発現が増加している9種の内在性膜タンパクを抽出することができた。これらの膜タンパクは充実型肺腺癌の表現型に関与している可能性が高く、充実型浸潤性肺腺癌に対する新たな治療標的となり得ることが推測される。一方、10種の転写因子に関する機能解析のための過剰発現レンチウイルスベクターの構築、安定発現株樹立に時間を要しており、現在のところ全ての転写因子について安定発現株を樹立するには至っていないことから研究実施に遅れが生じてしまった。早急に細胞株を樹立し、機能解析を進める必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
① 本研究で同定した充実型浸潤性肺腺癌に特徴的な転写因子および内在性膜タンパクの発現を、浸潤性肺腺癌患者において免疫組織化学染色を用いて検討し、生存期間などを含む患者背景との臨床病理学的解析を実施する。 ② 10種の転写因子が、浸潤性肺腺癌の表現型に与える影響を検討するために、安定発現株を用いて細胞増殖能、浸潤能などの分子生物学的特性を明らかにするとともに、充実型亜型形成に対する影響を検証する。 ③ 肺腺癌発癌および充実型亜型形成における同定転写因子の役割を明らかにするために、肺腺癌in vitro発癌モデルを用いた検証を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
安定発現株樹立、細胞培養, ウエスタンブロット, 免疫染色などの分子生物学的解析に使用する試薬、およびプラスチック製品などの消耗品の購入費に充てる予定である。また、論文掲載料や学会参加費として使用する予定である。
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