研究実績の概要 |
術前化学療法を行った筋層浸潤膀胱尿路上皮癌とそのリンパ節転移検体において、アンドロゲン受容体(AR)の発現状況を免疫組織化学的検討で評価した。結果、これらの症例では膀胱原発巣でのAR発現は概して低く、さらにリンパ節転移部ではほとんどの症例で陰性であることが確認された。一方、ARの高発現を示す症例が一部存在することも確認された。 ヒト膀胱尿路上皮癌細胞株であるT24細胞に対して、AR強制発現株作成を行った。結果、AR関連因子であるprostate transmembrane protein, androgen induced 1 (PMEPA1)のmRNAの発現上昇が確認された。一方、同細胞株へのDHT添加では強制発現前株との比較で細胞増殖能には変化はなく、またアポトーシス関連遺伝子であるcaspase-3,8,9のmRNA発現量にも変化はみられなかった。 他、T24細胞のPMEPA1強制発現株を作成し検討した結果、EMTマーカーであるvimentinの発現が減少した。この結果は、T24細胞AR強制発現株及び、AR-PMEPA1二重強制発現株でも同様であった。よって、PMEPA1を介してvimentinを発現が抑制されていることが示唆された。加えて、T24細胞のAR-PMEPA1二重強制発現株はDHTの濃度依存的にcaspase-9の発現が上昇し、かつ増殖能が低下おり、ARの活性化及びPMEPA1の強制発現はT24細胞の増殖能に影響を与える可能性が示唆された。 今後、AR、PMEPA1、EMTの三者の関係性について検討し、migration assayやinvasion assayでの検討が必要である。また、PMEPA1が細胞内のタンパク質分解に関与し、TGFβ-SMADシグナルにも影響することから、尿路上皮癌におけるTGFβ-SMADシグナルに着目した検討も重要である。
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