研究実績の概要 |
北里大学病院で2011~2012年にNCRT未施行で外科的切除された100例の大腸癌(34症例の直腸癌を含む)及び2006~2014年にNCRT後に外科的切除された109例の進行期直腸癌で、免疫組織化学染色(PD-L1, PD-1, CD4, CD8, CD68, β-カテニン, MLH1, MSH2, MSH6, PMS2)を行った。腫瘍部を上層・中層・下層に3等分し、腫瘍細胞と間質細胞を400倍視野で評価した。 大腸癌の腫瘍細胞におけるPD-L1発現時は9例(9%)(1例(2.9%)の直腸癌を含む)に認められ、ミスマッチ修復遺伝子異常と有意な関連性を示した。間質PD-L1陽性免疫細胞は、しばしばPD-1及びCD8と共発現を示し、脈管侵襲や癌幹細胞化を誘導する核β-カテニン陽性簇出と密接な関連性を示した。間質PD-L1陽性の有無は予後との関連は見られなかったが、間質下層ではPD-1, CD8陽性細胞の高発現は独立した予後不良因子であった。NCRT施行された直腸癌では、腫瘍細胞のPD-L1発現は2.4%で、dMMRとの関連性は認めなった。間質のPD-L1陽性免疫細胞浸潤と腫瘍細胞の核β-カテニン高発現を示す症例は、NCRTの治療効果が不良で、簇出グレートも高値を示した。 PD-L1,PD-1,CD4,CD8,CD68陽性間質細胞が腫瘍間質下層に高頻度に認められ、しばしばPD-L1やPD-1とCD8との共発現が認められた。間質PD-L1陽性免疫細胞浸潤は、脈管侵襲や癌幹細胞化を誘導する核β-カテニン陽性簇出と関連性があることから、腫瘍間質下部は、PD-L1/PD-1による癌免疫寛容部と癌幹細胞化促進を示すニッチ様病変であることが想定された。NCRT抵抗例の進行期直腸癌にも同様の癌幹細胞化ニッチ様病変の形成を認めたことから、同ニッチ様病変はNCRT抵抗能獲得に関連性がある。
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