研究課題/領域番号 |
19K07422
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
下田 将之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (70383734)
|
研究分担者 |
西村 知泰 慶應義塾大学, 保健管理センター(日吉), 講師 (90348649)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 腫瘍間質 / 線維芽細胞 / ヒアルロン酸代謝 / 免疫細胞 |
研究実績の概要 |
ヒアルロン酸(Hyaluronic acid)は、グリコサミノグリカンからなる細胞外マトリックス(extracellular matrix)の一種で、組織や体液中に存在し、組織形成や恒常性維持に重要な役割を担っている。高分子ヒアルロン酸は細胞増殖・分化・運動、抗酸化、幹細胞能維持、ハダカデバネズミにおける発がん抑制など種々の生物学的機能を発揮する一方で、低分子化したヒアルロン酸は種々のシグナルカスケードを惹起して血管新生や炎症を促進することが知られており、ヒアルロン酸代謝機構の解明はがん微小環境を理解する上できわめて重要と考えられる。本研究では、ヒアルロン酸分解に中心的役割を果たす新規糖鎖分解酵素HYBID (HYaluronan-Binding protein Involved in hyaluronan Depolymerization)に着目し、Hybid遺伝子欠損マウスおよびヒト肺がん組織や初代培養間質細胞を用いて、がん微小環境形成・腫瘍進展におけるHYBIDの役割を明らかにすることを目的とする。現在までに野生型およびHybid遺伝子欠損マウスを用いてがん細胞移植モデルを作製し、それぞれのマウスにおける腫瘍発育や組織学的な変化を観察・比較するとともに、腫瘍内および単離間質細胞によるヒアルロン酸代謝解析を進めている。また、免疫組織化学的手法を用いたヒト肺がん組織におけるHYBID発現およびヒアルロン酸沈着レベルの解析、がん組織での腫瘍内間質細胞プロファイル作成や各種臨床病理学的因子情報の収集も並行して進め、間質由来HYBIDによる組織内微小環境変化への影響を見出しつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに野生型およびHybid遺伝子欠損マウスを用いてがん細胞移植モデルを作製し、それぞれのマウスにおける腫瘍発育や組織学的な変化を観察・比較するとともに、腫瘍内および単離間質細胞によるヒアルロン酸代謝解析を進めている。また、免疫組織化学的手法を用いたヒト肺がん組織におけるHYBID発現およびヒアルロン酸沈着レベルの解析、がん組織での腫瘍内間質細胞プロファイル作成や各種臨床病理学的因子情報の収集も並行して進めており、おおむね順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度中にHybid遺伝子欠損マウスを用いたがん細胞移植モデルの作製および組織学的な解析を完了するとともに、腫瘍組織や初代培養間質細胞を用いたヒアルロン酸代謝の生化学的な解析を詳細に進めていく予定である。また、ヒト肺がん組織におけるHYBID発現とヒアルロン酸代謝との関連や各種臨床病理学的因子との関連を詳細に検討し、腫瘍進展における間質由来HYBIDの臨床的な意義を明らかにする。また、ヒト肺がん組織より単離した初代培養線維芽細胞やヒト末梢血細胞より分離・誘導した免疫細胞におけるHYBID発現やヒアルロン酸代謝能の解析を検討していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
野生型およびHybid遺伝子欠損マウスを用いたがん細胞移植モデル作製および初代培養間質細胞の作製では、多くのマウスを必要とするものの、本年度マウスケージのスペース不足や人的不足が重なり年度内の研究完了が困難となり、動物実験に関しては次年度に本研究の一部を繰り越す予定にしております。繰り越し予算については、本実験を完了するために必要な研究員を雇用するための人件費・謝金、物品費やマウス購入・維持費に使用する予定です。
|