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2019 年度 実施状況報告書

NF2遺伝子変異に着目した悪性中皮腫の診断法および治療法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 19K07425
研究機関兵庫医科大学

研究代表者

佐藤 鮎子  兵庫医科大学, 医学部, 講師 (20419823)

研究分担者 辻村 亨  兵庫医科大学, 医学部, 教授 (20227408)
結城 美智子  兵庫医科大学, 医学部, 助教 (60467587)
篠原 義康  兵庫医科大学, 医学部, 助教 (60723509)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード悪性中皮腫 / NF2
研究実績の概要

悪性中皮腫はアスベスト曝露に起因する難治性腫瘍であるが、その発症に寄与する活性型のがん遺伝子変異は同定されておらず、CDKN2A(約70%で欠失)、BAP1(約40%で変異)、NF2(約40%で変異)などのがん抑制遺伝子の異常(不活化変異)を特徴とする。これらの異常を調べる手法として、CDKN2A 遺伝子を調べるFISH法や、その近傍遺伝子MTAPの免疫染色による代替法、およびBAP1遺伝子の変異を免疫染色で調べる手法の有用性は確立されているのに対して、NF2遺伝子の異常の検出については遺伝子レベルでの解析が中心であり、日常の診断業務に応用できる病理学的手法は確立されていない。そこで、NF2遺伝子異常を免疫染色によって予測可能かどうか検討した。まず、NF2遺伝子異常の有無が既に報告されている中皮腫培養細胞株を用いて、NF2遺伝子産物Merlinに対する免疫染色を検討した結果、NF2遺伝子異常の有無とMerlin染色性の有無に相関が認められる手法を見出した。次に、日本人の悪性胸膜中皮腫由来の培養細胞を用いてNF2遺伝子異常の有無を解析すると、17例中5例(29.4 %)でNF2遺伝子に変異が認められた。これらの培養細胞を用いてMerlin免疫染色を行うと、野生型NF2の細胞ではMerlin陽性を示したのに対して、変異を有する5例ではMerlinの発現消失を認めたことより、NF2遺伝子異常の予測にはMerlin免疫染色が有用であると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

NF2遺伝子異常の有無が明らかになっている中皮腫培養細胞株を用いてNF2遺伝子産物Merlinに対する免疫染色法を検討し、遺伝子異常の有無とMerlin染色性に相関が認められる手法を見出した。日本人の悪性胸膜中皮腫由来の培養細胞を用いて、同様にNF2遺伝子異常とMerlin染色性とを比較すると、NF2遺伝子に変異を有する細胞ではいずれもMerlinの発現消失を認めたことより、NF2遺伝子異常の予測にはMerlin免疫染色が有用であることが示唆された。当初の研究実施計画に沿って、おおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

実施計画に沿って研究を進める。これまでに得られた成果をもとに、悪性胸膜中皮腫の組織標本を用いてNF2遺伝子異常とMerlin免疫染色との相関性について検討を進める。NF2遺伝子異常を有する症例の病理組織学的な特徴を調べるとともに、治療応答性や予後などのデータを用いて臨床病理学的な解析を行う。さらに、正常中皮細胞株や悪性中皮腫細胞株を用いて、NF2遺伝子の機能解析を行う。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Clinical feature of diagnostic challenging cases for pleural biopsy in patient with malignant pleural mesothelioma.2020

    • 著者名/発表者名
      Hashimoto M, Sato A, Kuroda A, Nakamura A, Nakamichi T, Kondo N, Yuki M, Nabeshima K, Tsujimura T, Hasegawa S.
    • 雑誌名

      Gen Thorac Cardiovasc Surg.

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1007/s11748-020-01295-5

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cytoplasmic MTAP expression loss detected by immunohistochemistry correlates with 9p21 homozygous deletion detected by FISH in pleural effusion cytology of mesothelioma.2019

    • 著者名/発表者名
      Hamasaki M, Kinoshita Y, Yoshimura M, Matsumoto S, Kamei T, Hiroshima K, Sato A, Tsujimura T, Kawahara K, Nabeshima K.
    • 雑誌名

      Histopathology

      巻: 75 ページ: 153-155

    • DOI

      10.1111/his.13872

    • 査読あり
  • [学会発表] 悪性胸膜中皮腫におけるTRAF7遺伝子変異の解析2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤鮎子, 結城美智子, 篠原義康, 竹下純平, 油谷浩幸, 辻村 亨
    • 学会等名
      第108回日本病理学会総会
  • [学会発表] 悪性中皮腫細胞株におけるp62/SQSTM1の機能解析2019

    • 著者名/発表者名
      篠原義康, 佐藤鮎子, 結城美智子, 辻村 亨
    • 学会等名
      第108回日本病理学会総会
  • [学会発表] 悪性胸膜中皮腫の早期発見 胸水セルブロックを用いた免疫染色の有用性2019

    • 著者名/発表者名
      小畑有未, 結城美智子, 佐藤鮎子, 篠原義康, 辻村 亨
    • 学会等名
      第108回日本病理学会総会
  • [学会発表] 臓器病理学の最近の進歩 胸部腫瘍性疾患のアップデート, Sarcomatoid mesotheliomaのアップデート2019

    • 著者名/発表者名
      鍋島一樹, 濱崎 慎, 木下義晃, 吉村雅代, 松本慎二, 佐藤鮎子, 辻村 亨, 亀井敏昭, 岩崎昭憲
    • 学会等名
      第108回日本病理学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] Malignant pleural mesothelioma with TRAF7 gene mutation.2019

    • 著者名/発表者名
      Tsujimura T, Sato A, Yuki M, Shinohara Y, Takeshita J, Aburatani H, Sekido Y.
    • 学会等名
      31st European Congress of Pathology
    • 国際学会
  • [学会発表] 中皮腫アップデート 早期診断を目指して2019

    • 著者名/発表者名
      辻村 亨, 結城美智子, 篠原義康, 隅田安由美, 佐藤鮎子
    • 学会等名
      第58回日本臨床細胞学会秋期大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 呼吸器(ヨーロッパ細胞学会の内容から)中皮腫の細胞診診断update―中皮腫の遺伝子変異に基づく補助診断法2019

    • 著者名/発表者名
      濱崎 慎, 木下義晃, 松本慎二, 佐藤鮎子, 辻村 亨, 河原邦光, 廣島健三, 亀井敏昭, 鍋島一樹
    • 学会等名
      第58回日本臨床細胞学会秋期大会
  • [学会発表] 悪性胸膜中皮腫診断における胸水セルブロック法の有用性についての単一施設後ろ向き研究2019

    • 著者名/発表者名
      橋本昌樹, 中道 徹, 中村晃史, 黒田鮎美, 松本成司, 近藤展行, 結城美智子, 佐藤鮎子, 辻村 亨, 長谷川誠紀
    • 学会等名
      第60回日本肺癌学会学術集会

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公開日: 2021-01-27  

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