研究課題
悪性中皮腫は、CDKN2A、BAP1、NF2などのがん抑制遺伝子の異常を特徴とし、中皮細胞の良悪性の判定においては、これらの異常の検出が有用である。このうちCDKN2A FISHやその代替法であるMTAP免疫染色、また、BAP1免疫染色は日常の病理診断に取り入れられているが、NF2遺伝子の異常についてはほとんど解析されていない。そこで、NF2遺伝子異常の有無が明らかになっている悪性中皮腫由来の培養細胞を用いて、NF2遺伝子産物Merlinに対する免疫染色の有用性を検討し、NF2遺伝子異常の有無とMerlin染色性の有無に相関性が認められる手法を見出した。この手法を用いて、悪性胸膜中皮腫の胸水セルブロック標本(20症例)におけるNF2 FISH法とMerlin免疫染色の結果を比較検討した。一部の細胞集団が明らかにMerlin陰性を示す場合も発現消失と判定すると、FISH法によるNF2遺伝子のhemizygous欠失との全体一致率は85%であった。今年度はさらに、悪性胸膜中皮腫の組織標本(13例)を用いて検討した結果、NF2遺伝子のhemizygous欠失が9例で認められ、このうち7例でMerlin発現消失が認められたのに対して、FISH法によりNF2遺伝子の異常が認められなかった4例中の2例がMerlin陽性を示した。胸水セルブロック標本での解析結果と併せると、FISH法で示されるNF2遺伝子のhemizygous欠失とMerlin発現消失の陽性一致率は89.4%、全体一致率は78.8%であり、Merlin免疫染色は悪性中皮腫におけるNF2/Merlinの不活化を調べるスクリーニング法として有用であると考えられた。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)
Cancer Cytopathology
巻: 129 ページ: 526-536
10.1002/cncy.22409
Oncology Letters
巻: 22 ページ: -
10.3892/ol.2021.13074