腫瘍免疫微小環境がPD-1/PD-L1阻害薬をはじめとする免疫チェックポイント阻害薬の有効性と密接に関係することがわかってきた。しかしながら、ゲノム科学の急速な発展が腫瘍細胞の特性を解明する一方で、種々の細胞の細胞間相互作用が複雑に絡みあう腫瘍微小環境は未だ不明な点が多く、免疫療法薬が効く肺がん・効かない肺がんを特徴づける免疫微小環境についての知見は不十分である。本研究では、肺腺がん手術検体235症例を後方視的に解析した。腫瘍免疫微小環境を腫瘍に浸潤する免疫細胞の種類や密度によってクラスタ解析したところ、特徴的な4群に層別化された。Group 1はPD-1陽性リンパ球の浸潤が目立ち、CD8陽性リンパ球数/CD3陽性リンパ球数が高く、KRAS変異の頻度が高く、喫煙者が多かった。Group 2は免疫細胞浸潤に乏しく、EGFR変異の頻度が高かった。Group 3はFOXP3陽性制御性Tリンパ球の浸潤が多く、EGFR変異の頻度が少なかった。Group 4はCD3陽性Tリンパ球、CD8陽性Tリンパ球、CD20陽性Bリンパ球などの炎症細胞浸潤が多く、三次リンパ濾胞が目立ち、組織学的分化度が低かった。さらに、PD-L1陽性肺腺がんを浸潤免疫細胞の種類・密度によってクラスタ解析したところ、CD8陽性リンパ球数/FOXP3陽性リンパ球数が高く、予後良好である一群が同定された。肺腺がんは免疫細胞の腫瘍内浸潤という観点からもheterogeneousな集団であり、遺伝子異常や臨床病理学的因子との関連性がみられた。症例数と免疫細胞の種類を増やすとともに、網羅的ゲノム情報や治療効果情報を付加させることにより、肺がん免疫微小環境の更なる特徴化が必要である。
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