研究課題/領域番号 |
19K07427
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研究機関 | 地方独立行政法人埼玉県立病院機構埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所) |
研究代表者 |
井下 尚子 地方独立行政法人埼玉県立病院機構埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 臨床腫瘍研究所, 客員研究員 (20300741)
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研究分担者 |
須賀 英隆 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (20569818)
西岡 宏 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (60218120)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / 超微構造 / 下垂体 / 3次元培養 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
ヒトiPS細胞由来3次元培養組織の超微形態学的検討を行っている。昨年度は2つのOriginal articleにおいて、1つは下垂体、1つは副甲状腺のiPS細胞由来3次元培養組織を、電子顕微鏡を用いてその形態学的な特徴を報告した。いずれも内分泌細胞であり、電顕検索は、分泌顆粒の量、形、分布の状態などに注目し、細胞の成熟過程、程度を評価するのに適した技術である。上皮の性質も示すことから細胞間接着因子、あるいは細胞集塊のinside/outsideなどを評価することも可能である。内分泌細胞のみの集塊と考えられていた組織の最表層には上皮の性質が強い菲薄な細胞が覆っていることも観察された。 今まで既に報告してきた学術論文に利用した培養組織の観察を含めて、それまでに至る形態学的に全体を通してみてきた内容について、現在学術論文を作成中である。嚢胞状変化が起きる過程で見えた細胞壊死は、培養組織の塊を一度破壊し再培養することで内部変性を減らしてさらに維持できることに繋がった。iPS細胞は環境によりどんな分化でも起こすが、何らかの細胞分化マーカーを使った検索技術ではない、全体を見る観察評価の利点を大いに発揮できたと考えている。このような全体的な把握を可能にするのは、日常の外科切除検体に対する病理診断学的知識の程度に依存するため、内分泌腫瘍細胞の分化にかかわる検討を並行し、現在TSH陽性細胞の機能について検討中である。 体内に移植することを考えた場合には、がんオルガノイドをヌードマウスに移植する場合とは異なり、余計な因子(がんオルガノイドのマトリゲルなど)を同時に注入することは回避すべきである。このため、どのような層構造であった培養組織が生着に適しているのか等についても、形態学の立場からも評価することが望まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各iPS細胞由来内分泌細胞培養組織の評価が終了し、それぞれがOriginal articleとして発表がひと段落したことから、これらを用いた形態学的な評価で注目した点、それぞれの所見などについて、公表を行う段階となったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞集塊を形態学的に観察するうえでの観察ポイント、電子顕微鏡を用いた観察が適している点を含めて、総合的な発表を予定している。内分泌腫瘍の観察では、内分泌顆粒を持つことなどが内分泌細胞の証明となり、各分泌ホルモンに差が非腫瘍性細胞において形態学的に知られていることを利用し、それに似ていることを指標として超微構造を評価し診断する。iPS細胞由来培養組織では、その培養のステップ、段階に依存し、細胞分化が不十分である細胞を観察している可能性を評価する必要性も想定される。何をもって「十分に」分化した細胞と評価してよいのかの指標、広く認められたGrading Systemは存在していない。今後こういった培養細胞を用いた再生医療などが広く行われることを想定すると、多方向分化を行えない細胞として分別していく必要性なども想定し評価項目を端的にまとめる必要があり、これらに役立つように「分化」とは何かを考えた報告を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
各報告がやや遅れたことにより、全体的な発表を遅らせたため、その校正費、投稿費などを残した状態である。また追加検討も行うため、試薬、消耗品費も残した。
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