研究課題/領域番号 |
19K07432
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
中澤 匡男 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (10345704)
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研究分担者 |
望月 邦夫 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10377583)
近藤 哲夫 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (30334858)
大石 直輝 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (90623661)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 甲状腺未分化癌 / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
本研究では免疫組織化学法を用いて甲状腺未分化癌における免疫チェックポイント蛋白の発現を検討する。未分化癌は全身臓器の上皮性悪性腫瘍のなかでも、最も予後不良なことが広く知られている。様々な方面からの治療アプローチが試みられているが、有効なものはまだない。未分化癌の形態的特徴は様々であり、腫瘍内に炎症細胞 (免疫担当細胞) を多く含む1群も存在する。その様な群においては複数の腫瘍免疫機構の関与が示唆される。免疫チェックポイント蛋白のなかでPD-1/PD-L1の高発現に関する報告は既にいくつかなされているが、その他の蛋白発現に関する検討はほぼない。それらの発現が明らかになることで、PD-1/PD-L1阻害剤との併用療法への breakthrough が期待される。ターゲットとする蛋白は TIM-3 (T-cell immunoglobulin and mucin domain 3) であり、PD-1/PD-L1同様、抗がん作用にブレーキをかける機能がある。また、CD47はマクロファージ、樹状細胞などの貪食細胞から身を守ることが知られている。FoxP3 (forkhead box P3) は制御性T細胞のマスター転写因子で、腫瘍免疫を含めた全ての免疫反応を抑制する。TIGIT (T-cell immunoreceptor with immunoglobulin and ITIM domains) は細胞障害性T細胞の活性を抑えることにより抗がん作用を示す。CD226 (PTA1もしくはDNAX-1 とも呼ばれる) は、この TIGIT と競合的に作用する受容体で、腫瘍免疫力を高めることが知られている。これら複数の蛋白発現を検討予定である。現在の進行状況としては、未分化癌症例の収集と免疫組織化学法の染色条件の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究初年度と自分自身の異動時期が重なり、研究体制・環境の整備に時間がかかった。全く新しい所属先での出発となり、いまだ人的、設備の面でも制限が多いが、徐々に協力者が増えている状況である。その他の遅延理由としては甲状腺未分化癌が非常に稀な腫瘍であり、症例数の収集に難渋している点が挙げられる。現在、甲状腺専門病院である伊藤病院の協力を得て16例を確保している。今後さらに症例数を増やす予定である。技術的な面では、ホルマリン固定パラフィン包埋組織での使用可能な市販の一次抗体を既に購入済であるが、その免疫組織化学法の染色条件の設定に時間が費やされている。免疫チェックポイント蛋白は腫瘍内のみでなく正常組織での免疫反応過程でも発現するため、前処理や一次抗体の希釈倍率を慎重に陽性コントロール標本の染色状態を検討中である。合計5種類の一次抗体を購入し、それぞれに対して染色条件を検討しているため時間がかかっている。すでに FoxP3、 TIGIT、CD226 の最適な染色条件は設定済であり、TIM-3、CD47 に関しても順次決定予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針として、ターゲットである甲状腺未分化癌症例をさらに検索し、数を増やす。それぞれの免疫チェックポイント蛋白に対する免疫組織化学法の条件を決定し、染色を行う。免疫組織化学法により免疫チェックポイント蛋白を発現する細胞の有無および発現細胞の種類、局在を検討する。染色強度に基づいて蛋白の発現量を半定量的に評価する。また、比較対照として、腺腫様甲状腺腺腫、濾胞腺腫などの良性疾患・腫瘍や濾胞癌、乳頭癌などの予後良好な分化癌に対しても同じ一次抗体を用い、同じ条件で免疫組織化学法を行う。それらの結果を比較することにより、未分化癌に特徴的な蛋白発現を明らかにする。生腫瘍組織の採取が可能であれば、ウェスタンブロッティング法により蛋白発現を確認する。さらにRT-PCR、in situ hybridization (ISH) 法による検討を予定している。最終的には患者予後を含めた臨床病理学的パラメーターと、それぞれの免疫チェックポイント蛋白発の免疫組織化学法の結果との相関を明らかにする。実験の遂行には、研究協力者、臨床検査技師、研究技官などの協力・助力を得て、効率的に実験を行うようにする。データは学会等で発表を行い、広く他施設の研究者の助言を得ることとする。データ、検討結果は国際誌において論文化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:当初購入を予定していた、オリンパスのシステム生物顕微鏡の購入費が少なく済んだため。また学会参加費、旅費が不要であった。 次年度使用額の使用計画:昨年、5種類の抗体に対して、それぞれ免疫組織化学法の最適な染色条件は設定済であり、今年度は症例数を増やし、免疫組織化学法およびウェスタンブロッティング法、RT-PCR、in situ hybridization (ISH) 法などの併用実験を計画しており、薬剤購入費として使用する。また、現在準備中の顕微鏡用デジタルカメラ DP22支出予定である。また、国内外の学会参加費も支出予定である。
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